ペットとして売る子犬の繁殖場で400匹超の犬を虐待したとされる事件で、動物愛護法違反(虐待)の罪に問われた長野県松本市内の元経営者の男(61)に対する初公判が16日、長野地裁松本支部(高橋正幸裁判官)であった。検察側が冒頭陳述などで指摘したのは、計1千匹を多頭飼育した劣悪な状況だった。
起訴されたのは「アニマル桃太郎」という屋号だった繁殖場の元経営者。起訴状によると、被告は昨年9月2日、松本市内の2カ所の繁殖場で、計452匹の犬を劣悪な環境で拘束して衰弱させ、虐待したとされる。初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。
この事件では、県警が昨年9月に2カ所の繁殖場などを家宅捜索し、同11月に被告を動物愛護法違反容疑で逮捕した。捜査関係者によると、2カ所で飼われていた犬は計約1千匹に上ったという。
検察側は冒頭陳述で、事件当時の従業員は被告を除いて14人にとどまり、環境省令で定められた1人あたりの飼養数(15匹)の上限を大きく超えていたと指摘。糞尿(ふんにょう)を清掃しなかったり、眼病や皮膚病の犬を治療せず放置したりしていたとした。2018年10月~21年7月で約4億2千万円を売り上げていたことも明かした。
杉本彩さん「災害級の虐待」
証拠採用された元従業員の調書も読み上げ、手術痕が開いて内臓が飛び出た犬がいたことなども指摘した。犬舎内の臭気が異常に高い濃度を測定していたことも証拠として示した。被告は調べに対し、事件を起こした理由を「人手不足にもかかわらず利益を追求したため」などと述べたという。
県警による家宅捜索時の動画も法廷内で流された。薄暗く、汚物や体毛が付着して黒くなったケージが、狭い犬舎にひしめくように置かれている。ケージ内の犬は落ち着かず、ほえ回っていた。
初公判は、公益財団法人「動物環境・福祉協会」の代表理事を務めるタレントの杉本彩さん(53)も傍聴した。公判後の記者会見で杉本さんは法廷で流れた動画に触れ、「想像を絶する。怒りと悲しみをおさえるのに必死だった」と話した。同法人は事件について県警に告発したことを公表している。杉本さんは「世話できる状況ではない。誰が見ても異常な状態。雑巾のようにボロボロになっている犬もいて災害級の虐待だ」などと非難した。
記事の後半では、繁殖場から引き取られて家族の「癒やし」となったヨークシャーテリアを紹介します。
この繁殖場をめぐっては、行…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル