長年止まっていた「核のごみ(原発から出る高レベル放射性廃棄物)」の最終処分場の選定プロセスが動き出した。手を挙げたのは人口減に悩む北海道の小さな自治体だ。住民の反対や不安もあるなか、選定への応募に動いた背後には、原発再稼働を推進する経済産業省の周到な準備も見え隠れする。核のごみの処場が完成した例は世界でもまだなく、今後も曲折が予想される。
応募に向けて動いたのは、北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村。日本海側に面した同じ「後志(しりべし)」と呼ばれる地域だ。同地域には北海道電力泊原発(泊村)もある。2町村と原発との関わりはこれまで対照的だった。
寿都町は片岡春雄町長が風力発電による売電に力を入れ、再生可能エネルギーで全国的な知名度があった。それが突然、今年8月中旬に「核のごみ」の処分場選定への応募検討を明らかにした。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の見直しで売電収入が減りかねず、人口減の見通しもあり、町財政への危機感があったという。
片岡町長は応募検討を表明後、「核のごみ(の最終処分)は日本では進んでいない。これは無責任だ」と繰り返し述べ、8日の会見でも「寿都、神恵内だけでなく、全国で最低でも10くらい(手が)挙がってほしい」と強調した。2年間の文献調査で得られる最大20億円の交付金が視野にあることも「交付金は魅力的だ」と隠さない。
だが、「肌感覚で町民の賛成はわかる」という町長の前のめりな姿勢に町民は反発する。反対派は住民投票条例の制定を求める署名を集め、今後、議会でも条例案の審議が行われる見込みで、波乱含みだ。
一方の神恵内村は、泊原発がある泊村の北隣。すでに原発立地地域として電源3法に基づく交付金を得ており、村財政の15%を占める。約820人の人口が今後も減る中、応募による新たな交付金に期待する。
村では9月上旬に商工会が村議会に応募検討を求める請願を出し、議論が加速した。全村議8人中、4人が商工会関係者だ。「文献調査への応募で得られる交付金で村の経済を回していきたい」(商工会幹部)との声が議会内で大勢を占めた。
請願後に村内で国などが住民に…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル