菅沼遼
長野県の中央アルプスで半世紀前に絶滅したとされる国の特別天然記念物・ライチョウの復活作戦を進める環境省は10日、動物園で生まれたヒナ16羽を含むライチョウ22羽をヘリコプターで木曽駒ケ岳(標高2956メートル)山頂付近に移送した。動物園生まれのライチョウを野生に帰すのは初の試み。成功すれば生息地の復活に大きく近づく。
天候不良で当初予定から8時間ほど遅れた午後2時40分ごろ、運ばれた箱の中から親の成鳥6羽とヒナ16羽が出てきた。約1週間、保護ケージ内で現地の環境に慣らした後、放鳥する。ヒナが親離れする10月上旬ごろまで無事に生き残れば来夏に繁殖できる可能性が高まり、作戦成功に前進する。
ライチョウは、環境省のレッドリストでは「絶滅危惧ⅠB類」に分類されている。中央アルプスでは半世紀前に絶滅したとされていたが、2018年に木曽駒ケ岳で北アルプス方面から飛来したとみられる1羽のメスを確認。これを機に環境省は20年8月、北アルプスの乗鞍岳から19羽を中央アルプスに移送するなど復活作戦に着手し、そこから昨夏に11羽を那須どうぶつ王国(栃木県)と茶臼山動物園(長野市)に移して繁殖させていた。今夏、両園で卵計28個が孵化(ふか)し生育したヒナのうち発育のいい那須の16羽が今回、親鳥の「故郷」に帰された。
今回の移送分を除いて中央アルプスでは現在、40羽前後が生息するとみられ、環境省は25年までに成鳥を100羽前後に増やす計画。復活作戦の指揮をとる中村浩志・信州大名誉教授は「このままうまくいけば、来年にも100羽にも増やすことができそうだ」と話した。(菅沼遼)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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