新型コロナウイルスの感染拡大により中国湖北省武漢市から1月29日に政府のチャーター機第1便で帰国し、千葉県勝浦市の「勝浦ホテル三日月」に滞在している約170人の再検査が11日、始まった。
【写真】帰国邦人を受け入れている千葉県勝浦市の「勝浦ホテル三日月」
検査結果は翌12日にも出る見通しで、陰性が確認できれば帰宅が可能となる。
有名人も多く通う勝浦タンタンメン「いしい」の石井忠春さん夫妻は、多い時は1日に200食が売れるが、今は10~20食だという。三日月の宿泊者が飲んだ後に食べるという勝浦タンタンメン。今回のコロナウイルス騒動による市内の風評被害は少なくないというが、「三日月の人も大変だと思う。本人たちも(ホテル滞在は)本意でないから…。お互い頑張りましょうという気持ちです」と思いやった。
夫婦で食堂を営む50代女性は「正しい情報を正しく理解して欲しい」と願った。正しい情報を得ようとせず安易に騒ぐだけの人が多いと頭を抱えた。一方で、「市が1番早く説明会を開いていたら、市民の受け止め方が変わっていた」と行政による対応の遅さも指摘した。実際に今回の件で、キャンセルも数件出ているという。
夫は「三日月が何かをしたわけではない」。東日本大震災で被害を受けた、福島県の気持ちがわかったと話す。「勝浦を知ってもらう事がうちのコンセプト」。観光客が戻ってくるまで、「勝浦は安全だ」と関東で2番目の水揚げ量を誇る鮮魚を使った、自慢の料理で伝える。
創業45年を迎えるタンタンメン「ニュー福屋」の水野隆造さん(65)は「時間がたって、みんなの頭から抜けることを待つしかないね」と冷静だった。近くの飲食店では、勝浦産の食材を使用していることを伝えると「じゃあいいです」と断られたこともあったという。ホテルが完全隔離を行っているだけに、「ここに移るわけがないのに…」と嘆いた。
多くの店が、売り上げが半分以下に落ちているというが「今閉めたら、本当に危ないんだとお客さんを不安な気持ちにさせてしまうから」と一時休業は一切考えなかったという。
今後の観光客の動向も気になる。2月22日から、1年でもっとも多くの人が勝浦を訪れるという「ひな祭り」のイベントが始まる。「私たち個人ではどうしようもできないけど、市がこの機会に、イベントをどうやってPRしてくれるのか…」。多くの不安を抱えながら、「安全だ」と伝えるために、明るい笑顔で今日も店に立つ。【佐藤勝亮】
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