東京医大の不正入試問題をめぐり、東京地裁が6日、得点調整で不利益を受けた女子や浪人生に対し、大学側は受験料などの返還義務があるとする判決を言い渡した。消費者被害を簡易な手続きで救済することを目指した新たな仕組みに弾みがつきそうだ。
「女性差別、憲法に反すると言ってもらえた」
受験生らに代わって原告となった消費者機構日本の佐々木幸孝副理事長は判決後の会見で「多くの受験生に被害回復の道を開く大きな社会的意義を有する」と判決を評価した。白井晶子弁護士も「女性差別という重大な問題が憲法の趣旨に反するとはっきり言ってもらえた」と喜んだ。
消費者トラブルは被害額が比較的少額。個人で裁判をするには費用と手間がかかるため、泣き寝入りするケースが多かった。だが、今回の仕組みでは、機構の勝訴が確定すれば、受験生は第2段階に参加することで受験料などの支払いを受けられるようになる。
対象となるのは、東京医大の17、18年度の計4種類の入試で不合格となった受験生。機構によると、女子だけで延べ約2800人おり、さらに浪人生らが加わるため、担当者は「かなりの数にのぼる」と話す。
機構によると、勝訴が確定した場合、東京医大側から受験した学生の名簿を取り寄せ、早ければ2カ月程度で対象者に裁判に参加するための書類を郵送。受験生は期間内に機構に書類を出す必要がある。機構のホームページでも手続きに関する情報提供をする。
東京医大「対応を検討」
医学部の不正入試を巡っては、昭和大や順天堂大などでも女子や浪人生への差別が指摘されている。機構は19年10月、同じ手続きで順天堂大を提訴。昭和大については、裁判外で受験料の返金を求める申し入れをしている段階だという。
東京医大は「判決内容を精査して、対応を検討します」とコメントした。(小林未来)
- 消費者被害回復裁判
- 悪徳商法など被害者の多い消費者トラブルを救済するため、国に認定された「特定適格消費者団体」が被害者に代わって裁判を起こせる制度。2016年10月に施行された「消費者裁判手続き特例法」で導入された。第1段階の裁判で業者に支払い義務があると認められれば、第2段階から被害者が参加し、裁判所が支払額を決める。消費者トラブルは1人あたりの被害が比較的少額で、個人で裁判を起こすには負担が大きい。消費者の時間や労力の負担を減らしつつ、被害を迅速に回復する狙いがある。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル