TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。2月12日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、化学講師の坂田薫さんが新たな“がん治療法”について解説しました。
◆“液体のり”が、がん治療に効果!?
東京工業大などのチームが、液体のりの主成分に、がんの放射線治療の成績を大幅に向上させる効果があるとする研究成果を発表しました。昨年には、東京大学などが液体のりの成分を使い、白血病治療で重要な細胞を大量培養するのに成功したとの発表もあり、現在、液体のりの成分の医療応用に注目が集まっています。
坂田さんは開口一番「日本人の死因第1位は、がんです。なので他人事ではない」とキッパリ。そして、液体のりが生命科学の分野で大きな注目を集める原因となったのは、「最先端のがん治療において、液体のりがその効果を飛躍的にアップさせるというものだったから」と説明。その最先端のがん治療とは、日本初の「ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neotron Captuer Therapy:以下、BNCT)」というもの。
これについて坂田さんは、「がん細胞は増殖するときにたくさんの栄養を必要とするので、糖とかアミノ酸をたくさん取り込みます。がん細胞が取り込んでいくアミノ酸にホウ素を結合させたものが、BNCTというがん治療法に使う薬剤です。これを注射すると、がん細胞だけがこの薬剤を取り入れていく。正常な細胞は取り入れないけど、がん細胞だけがホウ素原子を持つことになるんです。この状態で中性子という放射線を照射するとがん細胞だけが破壊されてなくなる」と解説します。
そして、この「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の特徴について、「今までの放射線治療は正常な細胞にも傷が付いていたし、何回も照射が必要だった。でもBNCTだと照射が1回で済む」と強調。
但し、BNCTには1つだけ問題があり、それは、「この薬剤が、がん細胞の中に留まる時間が短かったこと」。それを解決したのが、液体のりの主成分である「ポリビニルアルコール(PVA)」で、「水の中でポリビニルアルコールと先ほどの薬剤を混ぜ合わせると、ポリビニルアルコールにお薬がぶら下がったような状態になるんです。この状態で注射してBNCTを行うと、がん細胞の中に留まる時間が長くなったんです。マウスを使った実験では、がんが“ほぼ根治する状態”まで持っていけた」と言います。
◆なぜ“液体のり”に着目したのか?
BNCTが広まることによって、「がん治療の負担が減る」と坂田さんは期待を込めつつ、「過酷な状況は大きなチャンスになる」と声を大にします。というのも坂田さんいわく、今回の研究成果を発表した第一人者である東京工業大の野本貴大先生がなぜ“液体のり”の主成分・ポリビニルアルコールに注目したかと言うと「研究費がそんなにたくさんない中、安い材料をということが1つの理由だった」とその背景を紹介。「通常、お金や時間がないという状態はネガティブになりがちなんですけど、その中で打開策を見付けていくことは(今回のように)大きい何かを得るチャンスになるんじゃないか」と研究チームの功績を称えます。
MCの堀潤が、「こうした知見、研究者の方々の活動が、(最先端のがん治療を)支えてくれているんですね。時間もお金もかかるでしょうし、敬意をはらいたい」と語ると、社会学者の西田亮介さんも「大変誇らしいこと」と称賛し、「実際、臨床に導入されるまでには7~8年くらいかかると思う。ただ、今回は比較的すでに量産されている物質でこうした新しい効果が得られたというのは珍しいケース。7~8年という期間も、かなり短い可能性があるということ」と期待を寄せます。
最後に堀は「今回のケースは逆境をチャンスに変えてくださったからここまでこられたけど、全体で見るとこうした分野への投資、国費の投入はしっかりとやってほしい」と指摘していました。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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