北九州市小倉北区の旦過(たんが)市場で大がかりな再整備事業が今月、始まった。事業を前に店の意向を市が調べたところ、再整備後も「営業を続けたい」と答えたのは全体の約7割。店主の高齢化などを理由に、1世紀ほどの歴史を持つ「市民の台所」から離れる店も少なくない。
旦過市場は1913(大正2)年ごろ、魚の荷揚げ場が発展してできたとされる。建物が老朽化しているほか、川に店舗がせり出していて、過去の豪雨で浸水した。北九州市が2027年度にかけて、川にせり出した店舗をずらすなどして、新たな商業棟や駐車場棟を整備する。工事は市場をいくつかに区分けし、順次行っていく。
市と、市場関係者で作る旦過地区再整備協議会は昨年7~10月、各店舗の意向を調査。103店舗のうち69店舗が再整備後も「続けたい」と答えた一方、16店舗が「やめる」、18店舗が「わからない」だった。
市神嶽川旦過地区整備室の船越英明室長は「後継者や高齢化の問題といった色々な理由で営業をやめる店がある」と話す。店が抜けた場所には市場側が新たな店を誘致する。
創業100年近い「木下茶舗」店主の木下人英(ひとひで)さん(74)は、市場の再整備に伴う店の移転を機に、店を閉じようと考えている。毎朝3時に起きて山口県に仕入れに行く。工事が終わる時には80歳をすぎ「体力的にきつい」。新たにかかる内装費なども負担になるという。
店先で歌を歌うなど、市場の名物店主として知られる木下さん。「お客さんが笑ってくれるのがうれしい」と話すが、店を閉じることには「父の代からここで育っているからね、寂しいね」と声を落とす。「移転するまでは、一生懸命続けたい」
自家製の野菜を売る「岡本商店…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル