旧ソ連による北方領土の占領完了から5日で75年。領土問題に「終止符を打つ」と繰り返してきた安倍晋三首相が手にした「成果」は、「今のロシアは2島さえ引き渡す意思はない」(外交筋)ことが明らかになったという厳しい現実だった。約7年8カ月の交渉を振り返ると、在任中の解決という目標実現に焦り、「プーチン大統領は2島は返す」という楽観論を信じて突き進んだ、「1強」政権の危うさが浮かび上がる。 【動画】間近にくっきり北方領土 日ロ首脳会談前に空撮(2016年11月)
四島から転換語らず
「志半ばで職を去ることは断腸の思いだ」。8月28日の辞任表明会見。四島返還から2島返還を軸とした交渉にかじを切った首相が、北方領土問題で語ったのは自身の無念さだけだった。 約2年前の2018年11月14日、シンガポールでの日ロ首脳会談を終えた首相は高揚していた。「戦後残されてきた懸案、平和条約締結交渉を仕上げていく」。北方領土交渉で、日本がこれ以上は譲歩できない勝負カードを切った瞬間だった。 首相はプーチン氏との会談で、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速化させることで合意。歯舞、色丹両島の引き渡しと、残る国後、択捉両島では経済活動や自由な往来を可能にする「2島返還プラス共同経済活動」を目指す方針へ大きく転換した。 方針転換は、今井尚哉首相秘書官、北村滋内閣情報官(現国家安全保障局長)ら側近数人とひそかに決定。「四島返還を求めるだけでは、交渉は動かない」。首相は12年の就任当初から原則論を重視する外務省幹部らを遠ざけ、官邸主導での交渉進展を狙っていた。 首相の脳裏には、官房副長官として同席した01年3月の日ロ首脳会談の記憶があった。ロシア東部イルクーツクで当時の森喜朗首相と会談したプーチン氏は、日ソ共同宣言の法的有効性を公式文書で初めて認めた。森氏は歯舞、色丹の2島返還と国後、択捉2島の帰属問題を別々に解決する「並行協議」を提案。「2島先行返還論」だと国内で批判を浴び、続く小泉純一郎政権は四島一括の帰属確認を求める方針に戻ったが、安倍首相は「対ロ交渉の考え方自体は間違えていなかった」と評価していた。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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