矢島大輔、堀之内健史
過去最多の選手が参加した東京パラリンピックが5日、閉幕する。多様性と調和をうたう「平和の祭典」にも、参加できなかった国があった。それぞれの国のゆかりの人たちは、コロナ禍で開催できたことを喜びつつ、パリ大会が来る3年後の世界に思いをつなぐ。(矢島大輔、堀之内健史)
毎日涙の8歳歳、自分も鉄棒・スクワット 韓国籍の「オモニ」
「体が不自由なのにみんな頑張ってて、国とか関係ないな。毎日見とるけど感動して涙が止まらんねん」
大阪市生野区の高姫順(コヒスン)さん(87)は連日、自宅でパラ競技を観戦している。
コリアンタウンの路地裏で、前回東京五輪の数年後にお好み焼き屋「オモニ」を開業し、半世紀余り営んできた。店名は朝鮮語で「お母さん」の意味。常連客らに親しみを込めて呼ばれるうち、いつしか店名になった。
自らは韓国籍で、4年前に先立たれた夫の梁幸道(リャンヘンド)さんは朝鮮籍。共に朝鮮半島の済州島出身で、戦後の混乱期に日本に移り住み、出会った。初デートで故郷への熱い思いを語っていた夫の姿が忘れられない。
両国は2018年の平昌冬季五輪では南北合同チームで入場行進し、競技にも出た。その後、南北関係は再び冷え込んだ。北朝鮮は今年4月、コロナ禍を理由に東京五輪・パラへの不参加を表明した。「難しいことはわからんけどな、残念で胸が痛かったな。一緒に出られたらよかった」
8月に緊急事態宣言が出て、店の客は激減した。体の不調に加え、最近は視力が衰え、厨房(ちゅうぼう)に立てなくなった。
パラを観戦すると元気が出ると言う。車椅子がぶつかって倒れないかはらはらし、選手の泳ぎに圧倒される。刺激を受け、自らも1キロのバーベルを持って腕を鍛え、近くの公園の鉄棒にぶら下がる。スクワットも欠かさない。「選手たちも頑張っとるからな」
厨房での鉄板料理は息子らに…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル