川村剛志
北海道から東北にかけての太平洋沖で最大級の地震が起きると、原子力施設にはどれくらいの津波が押し寄せるのか。
内閣府は昨年4月、今回の被害想定に先立って、各地で想定される津波の高さの推計を示した。電力各社はこの推計に基づいて対策を進めている。
推計では、廃炉作業中の東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)には最大13・7メートルの津波が押し寄せる。核燃料が溶け落ちた1~3号機の地下などには、高濃度の汚染水がいまなお計約1万2千立方メートルたまっている。敷地が津波に襲われれば、汚染水が外に漏れ出る恐れがある。
このため、東電は海面からの高さ11メートルの予定で整備を進めていた防潮堤を、新たに最大16メートルに設計し直し、今年6月から建設を始めた。2023年度末の完成をめざす。また、原子炉建屋などの出入り口を密閉したり、水が入らない扉を設けたりする工事も対象127カ所のうち125カ所(今月15日時点)で完了したという。
東電福島第二原発(同県楢葉町、富岡町)には、10・9メートルの津波が襲来するとされる。ただ、主要な施設は標高12メートルの高台にあり、震災後に防潮堤も設置したため、東電は、敷地の一部がわずかに浸水するくらいで、今年6月に始まった全4基の廃炉作業には大きな影響は出ないとみている。
再稼働をめざす東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)と、日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)で推計された津波の高さは、新規制基準に基づく審査で想定された津波の高さを下回った。
女川原発には最大11・7メートルの津波が来るとされたが、同原発は標高14メートルの高台にあるうえ、海面からの高さが最大29メートルある防潮堤の設置も進めている。東北電の担当者は「安全性に問題はない」と話す。東海第二原発を襲う津波の推計は5・0メートル。こちらも海面からの高さ20メートルの防潮堤が来年末には完成するという。(川村剛志)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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