岡田昇
それは真冬の夜道に突然、現れるという。1人で外を歩いていると、毛むくじゃらの何者かが「あなたに」と1冊の本を差し出してくる。だが、受け取ってはいけない。その本を読み出すと止まらなくなり、その場で凍え死んでしまうからだ――。
この「都市伝説」の舞台は、北海道の観光都市・小樽。本を勧めてくる不思議な存在は「アナタニサマ」と呼ばれている。外見や着ている服、身につけているものなどは、見た人によってまちまち。ただ、大事そうに本を抱えていることは共通している。
実はこの話、札幌市の小磯卓也さん(58)が今春、文芸誌「逍遥通信」で発表した短編小説のストーリーだ。果てしない文学の魅力の源泉は何か。それはきっと、文学の妖精がいるからに違いない。そんな発想から、アナタニサマの物語を書き上げた。
卓也さんは妻のカヨさん(49)と2人で制作ユニット「ReguRegu(レグレグ)」を組んでいる。廃品で人形をつくり、ストップモーションアニメを発表するなどしてきた。
古着の毛皮などを材料にして、アナタニサマの人形もこれまでに13体制作。10月、小樽市内の3カ所で作品展「アナタニサマのいる街」を開く。卓也さんは「小説の舞台である小樽で開催できてうれしい」と話す。
作品展を機に、アナタニサマが小樽の新しい都市伝説として広まることを期待する声もある。(岡田昇)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル