北限のカモシカ・サルを撮影し続け、自然との共生をみつめてきた磯山隆幸さん=青森県むつ市脇野沢、中山由美撮影
本州最北の青森県・下北半島は、ニホンカモシカの北限の生息地だ。厳しい冬こそ、撮影にはもってこい。木の葉が落ちた森は見通しが良くなる。新雪に残る足跡をたどると、木立の向こうに姿が見えた。
白い世界にたたずむのは「シアン」。春に10歳になるオスのカモシカだ。こちらをじっと見ている。撮ってやるぞと意気込めば気配は見破られる。磯山隆幸さん(75)はゆっくり距離を縮め、「そこまでならいいよ」という所で止まる。野生動物と向き合って半世紀。「彼らの時間」に合わせることで撮らせてもらえる間合いを知った。
津市出身。北海道や沖縄など各地を旅していた22歳のとき、青森県脇野沢村(現・むつ市)を初めて訪れた。村人は「あがさまい(お上がり下さい)」と家に招き入れると、コップに酒をつぎ、まきストーブの上に身欠きにしんを並べた。武骨だが、旅人をもてなす温かさに心をつかまれた。
過疎地ながら、泊まった脇野沢ユースホステル(YH)はサルやカモシカを調査する若者でにぎわっていた。自然保護ブームと畑を荒らす食害。野生動物との対立ではなく共生を探ろうと、YHを経営する故・高橋金三さんと旅人が熱く議論していた。
足しげく通うようになり、高橋さんの娘のりょう子さん(74)と結婚。津市のスタジオで働きながら、写真の技術を学んだ。そして1987年7月、脇野沢へ移住し、夫婦でYHの経営を受け継いだ。
見えてきた個性、見せてくれた表情
森や海岸を歩き、サルとカモ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル