Re:Ron連載「知らないのは罪ですかー申請主義の壁ー」第5回
「働いてる? うそおっしゃい。生保(生活保護)なんだからそんなわけないでしょう」
ある年の冬、40代男性の外来受診の付き添いをしたときのこと。仕事が忙しく受診間隔があいてしまったことを男性がわびた際に、医師が男性に向けた言葉です。
「いや、本当ですよ。先生、わたし、働いてるんです」
男性はそう応じましたが、医師はいぶかしげな顔をしてカルテに視線を落としました。
男性がうそをついていたわけではありません。
なぜ、医師はこのような言葉を男性に向けたのでしょうか。
連載5回目はこの医師の言葉を入り口に、スティグマと尊厳に焦点をあて、社会保障制度が抱えるもうひとつの矛盾について考えていきたいと思います(エピソードの内容は一部改変しています)。
日常に散らばるマイクロアグレッション
スティグマとは、特定の人や集団に向けられる否定的なラベリングやステレオタイプのことを指します。例えば、精神疾患、HIV/AIDS、性的指向、人種、障害、疾病、経済的地位などへの否定的なラベリングやステレオタイプが、偏見や差別、排除を生じさせる原因となっています。
医師の診察は丁寧でしたが…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル