台風15号によって住宅の損壊被害が相次いだ千葉県南部に16日、激しい雨が降った。突貫作業で屋根や壁をブルーシートで覆った家屋を、横なぐりの雨が容赦なくたたく。再び水浸しになった我が家に、住民は声を失った。
房総半島南部の鋸南町(きょなんまち)。屋根をブルーシートで覆った家屋や、窓ガラスが割れたり壁に穴が開いたりした家屋が目につく。
「昨日電気が通ったと思ったのに、今度はこの雨だ」。築50年の2階建て住宅に住む男性(69)は嘆きながら、雨粒のしたたる2階寝室の床を雑巾で拭いた。部屋には雨を受けるためのバケツが七つ並ぶ。
台風で屋根瓦の一部が飛ばされ、1階まで水浸しに。工務店に依頼して屋根にブルーシートをかけたが、また雨に見舞われた。「どんどん水がしみてきている。天井が落ちないか不安です」
寝室の天井にはすでに黒カビがびっしり。男性は「外壁にも穴が開き、全部直すには2、3年かかると言われた」と肩を落とした。
町役場近くのコンビニエンスストアでは、天井の一部に大きな穴が開いていた。強雨の中、水浸しになった店内から、売り物にならなくなった商品などをカートで運び出す作業が続いていた。
ボランティアの活動も激しい雨に阻まれた。
2階の外壁が飛ばされ、室内が水浸しになった無職男性(72)は、使えなくなったタンスや畳などを、廃棄場所までボランティアに運んでもらう予定だった。だが雨で中止に。「ボランティアの助けがないとどうにもできないのに……。でも、この雨だと仕方ないね」
館山市は全域、南房総市は一部地域に一時、避難勧告を出した。
「もうどうしようもないね」。館山市布良(めら)地区の小谷(おたに)登志江(としえ)さん(77)は、2階の床が抜けてがれきが散乱し、水浸しになった1階の惨状を見て涙を流した。
台風で2階の天井は吹き飛んだものの、1階の被害は比較的軽く、修復すればまた住めるのではと希望をつないでいた。近所の手を借りて2階をブルーシートで覆ったが、この日の雨は防げなかった。
今年4月に亡くした夫と40年来住み続けた愛着深い家。台風の後、市内の親戚宅に身を寄せながら、毎日様子を見に来ていた。
修復は無理だと覚悟を決めた。「家を見に来るのはもうやめます」と語った。(鶴信吾、寺沢知海)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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