フリーランスライターのオバタカズユキさん、森林ジャーナリストの田中淳夫さん、東洋大学教授の根本祐二さんの3人に聞きました。
災害の「想定外」には慣れたはずだった私たち。だが、千葉県では、台風15号による予想を超えた深刻な被害が今も残っている。今回浮き彫りになった課題と教訓を考えた。
オバタカズユキさん(フリーランスライター)
今回の千葉県の台風被害は当初報道量も少なく、マスコミは必ずしも事態の深刻さを伝え切れていませんでした。これまでの災害とはどこが違ったのでしょうか。
私は東京23区内在住ですが、両親が千葉県北西部にいるうえ、友人が県中部以南にもおり、よく釣りに訪れる房総半島にもなじみがあります。だから台風の進路に入る県南部に大きな被害が出ないか、早くから心配でした。
9月9日早朝に台風は直撃しましたが、9日から10日にかけての報道は、首都圏の公共交通機関がいかに混雑したのかばかり。JR津田沼駅に2キロ行列ができるのは異常な事態ですが、テレビの情報番組では「台風の日にも会社に行く日本人はおかしい」と笑う外国人観光客の紹介までしていた。こんな文化論的批評をやっている場合か、と思いました。情報がテレビから入らず、報道も少ないことに、被災者から「情報がない」「何もわからない」という声が上がったことは後日、判明した通りです。
報道側は事態を「過小評価」したのでしょうか。近年の豪雨災害などに比べ、幸い死者数が増えなかったことも初動の判断に影響したかもしれません。ただ、いくつかの自治体では、電気や水など生活インフラがまひし、経済活動が止まり、いまだ完全には復旧していません。一歩間違えたら病院や介護施設がどうなったか。
これが地方都市で起きたらもっと違う扱いだったかもしれません。東京という巨大都市の周辺にある「田舎」だからこそ、圧倒的多数の都市通勤者が気にする「東京情報」(今回では交通機関渋滞)への関心の陰に隠れてしまったのではないかと思いました。
同時に、私たちのSNS依存も…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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