南海トラフ想定被災地が関心 大船渡の市街地復興「差し込み型」移転

 東日本大震災後、岩手県大船渡市で採られた市街地復興の手法「差し込み型」移転に関心が寄せられている。住宅を浸水区域から、高台にある既存の集落の空き地に1戸ずつ移転するもので、大規模な工事が不要で工期が短く、事業費も抑えられるためだ。南海トラフ地震による津波の被害が想定されている地域では、被災前に復興方針をあらかじめ決めておく「事前復興」の参考にする動きが出ている。(宮脇稜平)

 わずかな平地の背後に山々が迫る大船渡市三陸町越喜来(おきらい)。折れ曲がった坂道を上ると、新しい住宅が点在しているのが目に入る。津波で自宅を流された人たちが、同じ地区の高台に再建した家々だ。

 住民の60代男性は「山を崩して大きな宅地を造ると、寄せ集めになって震災前の小さなコミュニティーが崩れる。ここでは町内会の祭りを開くメンバーも変わらず、住みやすい」と笑顔を見せる。

 大船渡市は、震災で住宅約4千戸が全半壊。市街地の復興を防災集団移転促進(防集)事業で図ったが、この事業で国から補助を受けるには、当初10戸以上の移転が要件だったうえ、大規模に造成しないと十分な用地を確保できなかった。

 そこで考え出されたのが、差し込み型移転だ。

 市の復興計画策定委員会の委…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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