地域ぐるみで水田を守っている京都府舞鶴市の室牛(むろじ)地区で、音楽プロデューサーの宗本康兵さん(39)や歌手・俳優の南野陽子さん(55)らが住民と一緒に田植えをした。市内の小学生らも参加し、初夏の日差しを浴びながら田んぼの中で交流を深めた。
「横一列で。遅いぞ!」
「はいっ」
「さあ、頑張れ!」
「はいっ」
地域の人のかけ声と、苗を手で植える参加者の返事が里山に響いた。
室牛地区は現在、小学1年生から80代までの7世帯計16人が暮らしている。過疎化が進む中、担い手がいなくなった水田は住民でつくる営農組合が守り続けており、計約4・7ヘクタールの地区の水田に耕作放棄地は一つもない。
「先祖代々受け継いできた田んぼと里山のある景観を次の世代につなげていきたい」と副区長の児玉亘(とおる)さん(51)。「アーティストの皆さんの発信力で室牛の知名度が少しでも上がれば地区にも活気が出る。頑張っていきたい」と話す。
宗本さんが2021年、別の歌手のコンサートのバンドメンバーとして舞鶴市を訪れた際、自然豊かな地域で地元の人たちと一緒に米作りをしたいと要望したのがきっかけ。仲介者から相談を受けた市側が室牛地区を紹介し、宗本さんが音楽仲間に声をかけて米作りを通じた交流が昨年から始まった。
2年目の今年は5月23日に田植えを実施。宗本さんと南野さんのほか、ベーシストの休日課長さん(36)▽シンガー・ソングライターの中嶋ユキノさん(38)▽バイオリニストの竜馬さん(38)の5人が訪れ、地区の住民や市立大浦小5、6年の児童13人と一緒に苗を植えた。夏に草刈り、秋には稲刈りを予定し、約1トンの収穫を見込んでいる。
田植えの合間には児童たちがアーティストを囲み、「田植えの感想は?」「音楽を始めたきっかけは何ですか」「地域にもっと人が集まるには何が必要だと思いますか」などと質問。区長の吉村雅安さん(77)は「子どもたちの心に残るイベントができたのは、地域にとっても非常に意義がある」と目を細めた。
北海道出身の宗本さんは「室牛が第二のふるさとになった。今年は子どもたちが初めて田植えに参加してくれて、とても頼もしかった」。南野さんは「去年よりはちょっと上手にできたかな。地域の方に温かく迎えてもらい、本当に感謝しています」と話した。
2人は舞鶴をイメージしたオリジナル曲を共同で制作している。作詞を手がける南野さんは「室牛や舞鶴の写真を何度も何度も見て、景色を思い出しながら書きました」、作曲を担当する宗本さんは「地元の人に歌ってもらえる曲になれば」と話した。(富田祥広)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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