田添聖史
京都・嵐山までの急流を下る「保津川下り」で起きた転覆事故。水難事故に詳しい「一般社団法人水難学会」(新潟県)の斎藤秀俊会長は「急流下りは長い歴史があっても、大きな危険がつきもの。万全の安全対策が必要」と指摘する。
この事故では、船頭の男性が死亡し、別の船頭の男性も行方不明になっている。
斎藤会長は、「急流下りは一般的な操船と違い、船が次の瞬間に上下左右のどこを向くか、難しい判断が連続する」と説明。「複数の船頭がいても、一つのミスが重大な結果につながる可能性は常にある」と話す。
船を運営する保津川遊船企業組合(京都府亀岡市)のホームページによると、乗客には救命胴衣の着用を求め、同意しない客や着用できない客は、乗船を断るとしている。
斎藤会長によると、救命胴衣には手動でひもを引っ張り膨らませる方式と、水につかると自動で膨らむ方式がある。また、腰巻き型と、上半身を覆うベスト型に分かれる。
斎藤会長は「今回の事故でどの救命胴衣が使われていたかはわからない」とした上で「船から投げ出されてけがをしたり、落水して手がかじかんだりした場合、手動式だと膨らませられない可能性がある」と指摘。「人命を最優先するなら、自動膨張式のベスト型が望ましい」とする。
また、この時期の川の水温は10度ほどだったと予想し、「落水すると、数分で体がかじかみ動きづらくなる危険性がある。まず岸に上がった上で、ぬれた服を脱いだり身を寄せ合ったりして救助を待つべきだ」と語る。(田添聖史)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル