市野塊
厚生労働省は23日、改正感染症法に基づき、東京都とともに、都内すべての医療機関に病床確保や人材派遣を要請した。今年2月に成立した同法による国の要請は初めて。正当な理由がないにもかかわらず応じなければ勧告し、さらに従わなければ医療機関名を公表することもできる。これまで都道府県が取り組んできた病床確保に、国が強い姿勢で乗り出した。
田村憲久厚労相と小池百合子都知事が厚労省で会談して合意した。
都内の「即応病床」は23日時点で約6千床。療養者のうち、入院できた人の割合を示す「入院率」は、18日時点で9・5%にまで落ち込んでいる。
同法16条の2による要請は都内約650の病院、約1万3500の診療所、医師や看護師らの養成機関が対象。すでに新型コロナ患者の治療にあたっている医療機関ではさらに病床を確保したり、回復期の患者が入る医療機関では受け入れを増やしたりするように要請する。
患者を受け入れていない診療所などにも、医師や看護師の派遣を求める。都は軽症患者用の「酸素ステーション」など臨時の医療施設を開設しており、人手が必要になっている。
小池知事は、都内には国立の医療機関や大学病院が多く、政府と連名での要請になったと説明。「デルタ株の猛威に総力戦で臨む必要がある。急を要しない入院や手術の延期など、通常医療の制限なども視野に入れている」と語った。ただ、病床確保にはこれまで都も繰り返し取り組んできており、実効性は見通せない。都はまず、用意できる病床数を今月末までに報告するよう各医療機関に求めることにしている。
同法に基づく要請はこれまでに、大阪府や奈良県、静岡県、茨城県などが出している。
医療体制を決める医療法では、日本の病院の7割を占める民間病院に「ベッドを増やせ」と指示する権限は都道府県知事らにはない。改正感染症法は今年2月に成立。要請に応じない医療機関名の公表を可能とした。当初の政府案にあった入院措置や患者の接触調査に応じなかった人に科すことにしていた刑事罰を行政罰に変更。自民、立憲民主両党が修正合意したため、審議が4日間というスピード成立だった。
「まん延防止等重点措置」を創設した改正特別措置法とともに、「第3波」後の政府による新型コロナ対策の柱とされる。(市野塊)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル