原爆の悲惨さを描いた丸木位里、俊夫妻の連作「原爆の図」の第1部「幽霊」の修復作業が、丸1年以上をかけて大詰めを迎えている。
和紙に描かれた水墨画の「幽霊」は屛風(びょうぶ)に仕立てられており、縦1・8メートル、横7・2メートル。広島に原爆が投下された直後の光景が描かれ、1950年に発表された。経年劣化からの傷みや染みが目立つようになっていた。
所蔵する「原爆の図丸木美術館」(埼玉県東松山市)の「学生が触れることで、次の世代へつなぎたい」との意向から、愛知県立芸術大の文化財保存修復研究所(同県長久手市)で2021年12月から修復が始まった。
最初に画材の素材や内部をX線や赤外線で分析。作品が描かれた和紙を補強する裏打ち紙をはがして新しくしたり、黄ばみを取り除いたりした。3月末には新しい屛風に貼り付ける工程が行われた。5月までに修復を終える予定だという。
修復を担当した研究員の磯谷明子さんは「この作品に関われたことは誇り。未来につなぐため、作品が継承されていくことを願っています」と話した。(長島一浩)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル