朝日新聞は、第2次世界大戦の展示をメインとする全国の平和資料館にアンケートしたところ、入場者数の統計がある施設で見ると2018年度の入場者総計は約508万人で、戦後60年だった05年度より47万人減っていた。大半の施設には戦争体験の語り部がおらず、戦後75年のいま、活動は曲がり角にきている。
全国各地の平和資料館の関係者らでつくる「平和のための博物館・市民ネットワーク」や研究者の協力で、宗教団体運営や芸術系施設を除く、52の公的施設と25の民間施設に調査表を送った。60館から回答を得た。
回答に応じた施設のうち入場者数統計のある施設だけで見ると、2018年度入場者数は53館で計507万9121人だった。戦後60年だった05年度は31館なのに計約555万人で、約47万人減っている。
05年度と18年度を比べて入場者の減少が目立ったのは沖縄だ。
ひめゆり平和祈念資料館は05年度の約92万人から約53万人(42%減)、沖縄県平和祈念資料館も約42万人から約35万人(16%減)に落ちた。ひめゆりの普天間朝佳(ふてんまちょうけい)館長は「戦争から遠くなっている世代の関心が薄れているうえ、沖縄観光が変化した」と話す。個人観光中心になり、観光バスでやってくる団体客が減ったという。
ほかにも浦頭引揚記念資料館(長崎県、59%減)▽静岡平和資料センター(静岡県、49%減)▽呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム、広島県、57%減)▽大阪国際平和センター(大阪府、21%減)など、入場者が減っている施設が相次ぐ。
一方で広島、長崎の国立原爆死没者追悼平和祈念館は18年度に過去最多の年間入場者数を記録。広島平和記念資料館は16年度に過去最多の174万人を数えたが、19年度も最多に迫る勢いだ。
同館の好調を支えているのは、16年のオバマ米大統領(当時)の広島訪問前後から急増する外国人客だ。18年度入場者の152万人中43万人が外国人だった。逆に国内客は109万人で前年度比で20万人減っていた。
入場者のうち最も多い年代について尋ねたところ、この質問に答えた37館のうち、40~60代が15館、次いで10代以下が13館、70代以上が8館。今後の入場者数の見通しは60館中「増える」は原爆関係館など6館だけだった。
戦争体験の語り部の人数は、この質問に答えた32館中「1人」が7館、「2~9人」が10館で、大半の施設にはいなかった。
18年度収支は無回答を除き、黒字11館に対し、赤字が19館。自治体が人件費を負担したり、ボランティアが支えていたりするが、赤字施設では厳しい運営を迫られている。(前川浩之、岡田将平、東郷隆)
アンケートでは、比較的新しい施設や有志で維持している小規模施設でいっそう厳しい運営を迫られている実情も明らかになった。
東京都八王子市の印刷会社ビルの2階にある「八王子平和・原爆資料館」。長崎原爆の日の昨年8月9日、館を訪れたのは5人だった。窓口の水谷辰夫さん(68)は「これでも相当多いほう」。普段は1日1人か2人で、ゼロも多い。
広島で被爆し、八王子市在住だ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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