原爆症認定訴訟の上告審判決が25日、最高裁で言い渡された。第3小法廷は、最大の争点だった経過観察における「現在の医療が必要な状態(要医療性)」の解釈をめぐり、要医療性を認定するには「積極的な治療行為の一環と評価できる特別の事情が必要」との初判断を示した。幅広い認定を求めていた原告側にとっては厳しい結果となったが、今後の認定実務では、最高裁が統一的な指針を示した意義は大きい。(大竹直樹)
原爆症の認定要件は、(1)放射線起因性(症状が被爆に起因)(2)要医療性(現在も医療が必要な状態)-の2つ。このうち放射線起因性の認定判断については、長崎市の女性が起こした訴訟で、最高裁が平成12年7月の判決で一定の指針を示し、生活実態を総合的に勘案するなど幅広く認める流れが加速。厚生労働省の基準でも、放射線起因性は認定判断の範囲が明確になった。
これに対し、要医療性は「当該疾病などの状況に基づき、個別に判断する」とあるのみで、これまで明確な指針はなかった。
原告側は1月21日の上告審弁論で、「医療現場では経過観察も重要な医療行為だ」と主張したものの、第3小法廷は判決の中で、「医学的に必要かつ妥当な経過観察が行われているというだけで、ただちに要医療性を認めることはできない」と指摘した。
ただ、国はこれまで「経過観察は要医療性に含まれない」(厚労省健康局)との立場だったが、第3小法廷は経過観察が要医療性に含まれないと判示したわけではない。(1)病気の悪化の程度(2)悪化や再発による結果の重大性(3)医師の指示内容-など経過観察を必要とすべき事情を総合的に考慮し、個別に判断すべきだとしたのだ。
こうした要件を満たさなかったとして請求を退けられた原告女性3人も、将来にわたって認定の道が閉ざされたわけではない。症状の変化などにより、今後認定される可能性もある。
被爆時に一定地域にいたり、原爆投下後2週間以内に広島、長崎両市に入った人は被爆者と認定されるが、さらに原爆症と認定されると月14万1360円が支給される。判決は「現実に医療行為を必要とする人に支給するという法の趣旨、経緯に照らして判断すべきだ」と言及した。
経過観察の「要医療性」をめぐる司法判断が整理されたことで、原爆症認定の線引きが明確になった。今後の認定実務では、国に対しより高い透明性が求められているといえる。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース