滝口信之
東京電力福島第一原発事故をめぐり、避難指示の対象外だった福島県いわき市の住民1345人が、国と東電に約13億6千万円の損害賠償を求めた集団訴訟で、仙台高裁(小林久起裁判長)は10日、国の責任を認めない判決を言い渡した。先行した同種訴訟で国の責任を否定した昨年6月の最高裁判決に沿う結果となった。
今回は、最高裁の判決後、下級審では初めての判決だった。東電に対しては賠償責任を認めた。
一審・福島地裁いわき支部判決は2021年3月、国と東電の責任を認め、約1500人に計約2億400万円の賠償を命じた。原告の住民と、被告の国・東電の双方が判決を不服として控訴していた。
国の責任をめぐる控訴審の争点は、02年に国が公表した地震予測「長期評価」などを踏まえ、①国は巨大津波を予見できたか(予見可能性)②予見可能性に基づき、国が東電に対策を取らせていれば事故は防げたか(結果回避可能性)――の2点だった。
原告側は22年11月の最終弁論で「経済産業相が02年以降に調査・検討していれば、東電に対して有効な対策を取るよう規制権限を行使し、事故の発生を防ぐことはできた」と主張した。
ただ、これに先立つ22年6月、最高裁第二小法廷は同じ争点の4件の集団訴訟について、「実際の地震・津波は想定よりはるかに大規模で、国が防潮堤を設置させても事故は防げなかった」と判断した。予見可能性については明確な判断を示さずに国の責任を否定し、事故の責任は東電だけが負うことになった。(滝口信之)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル