参院自民党は29日の特別総会で、新しい参院議員会長に竹下派(平成研究会)の関口昌一参院国対委員長を正式に選出した。今後の焦点は未定の参院幹事長ポストだ。大きな影響力を持っていた吉田博美氏が健康問題で先の参院選に出馬せず引退。参院選で自民が単独過半数を割った中、次期参院幹事長には高い手腕が求められるが、9月中旬の内閣改造・党役員人事まで“空白”が続く。
「私の姿勢は『謙虚に丁寧に』。橋本聖子前会長、吉田前幹事長が参院の位置づけ(の確立)のために頑張っていただいた流れを継続する」
関口氏は特別総会のあいさつで吉田氏の口癖を引用してこう述べ、路線継承を宣言した。
実力者だった吉田氏は「衆院の補完勢力」とも言われた参院の発言力を高め、衆院や首相官邸にモノが言える存在にすることを目指した。実際、重要法案の審議には衆院と同程度かそれ以上の時間をかけ、衆院側が反対した国会会期の長期延長を安倍晋三首相にのませることもあった。
参院選後に吉田氏が参院会長に昇格し、引き続き参院を取り仕切るのが既定路線とみられていたが、吉田氏は引退を決断した。次のかじ取り役に推したのは最大派閥・細田派(清和政策研究会)の世耕弘成経済産業相で、その意向は首相にも伝えていた。
参院自民はこれまで細田、竹下、岸田(宏池会)の主要3派が主導。世耕氏は近年、細田派を代表して、吉田氏、岸田派の林芳正前文部科学相と会食を重ねて気脈を通じてきた。首相とのパイプも太い。
主要3派は参院選前、選挙後の新体制について、岸田派の金子原二郎予算委員長を参院会長に擁立し、世耕氏が幹事長に就く方向で固まりつつあった。しかし、「関口会長」が急転直下決まった。背景には、引退後の今も参院に影響力を持つ竹下派の青木幹雄元参院議員会長の意向がある。
青木氏と師弟関係にある吉田氏の引退後も同派の影響力を維持する狙いがあるとみられ、23日午前に吉田氏の入院先に関口氏、石井準一参院筆頭副幹事長ら同派幹部が集まり、この方針を確認した。参院選で4人の現職が落選した岸田派の林氏も方針転換に抵抗せず、了承した。
これに伴い参院幹事長の人事も流動的だ。世耕氏は就任にあまり積極的ではない。政府が韓国への半導体材料の輸出管理強化に踏み切り、担当閣僚としての重要性も増している。「合区」解消など重い課題も抱える中での新布陣は、9月中旬に予定されている内閣改造での世耕氏の処遇次第の側面が強い。(田中一世)
Source : 国内 – Yahoo!ニュース