参院選(21日投開票)で自民党の2つの派閥が崖っぷちの戦いを強いられている。岸田派(宏池会、49人)は東北の改選1人区などで現職が苦戦し、竹下派(平成研究会、54人)は引退した同派会長代行の吉田博美参院幹事長の後継新人が1人区の長野選挙区で劣勢に立たされている。その結果は「ポスト安倍」の行方や派の影響力に関わるだけに、両派とも総力戦を展開している。
(田村龍彦、田中一世)
「まさに全国有数の激戦区だ。あと1票積み重ねてもらえば逆転できる」
安倍晋三首相(党総裁)は18日、滋賀県近江八幡市でこう声を振り絞り、滋賀選挙区(改選数1)の岸田派現職への支持を求めた。首相の滋賀入りは公示後2度目。1人区は全体の勝敗を左右するだけに、首相の演説も力が入った。
岸田文雄政調会長率いる岸田派は今回、9選挙区で現職が改選を迎えた。特に厳しいのが滋賀、山形、秋田の1人区だ。岸田氏は「どこもぎりぎりだ」と危機感を隠さない。滋賀には公示前に秘書団を派遣。山形と秋田には議員20人以上がローテーションを組んで泊まりがけで応援に入り、派を挙げた態勢を取る。いずれも岸田氏の指示だ。
実は今月、岸田派入りが確実な畦元将吾衆院議員(比例中国)が繰り上げ当選し、正式な入会手続きを経れば同派は50人となる。50人の大台超えは古賀派だった平成21年の衆院選前以来、10年ぶりだが、派内には「参院選で議席を減らせば『幻の50人』だ」と高揚感はない。
頭が痛いのは、派創設者の池田勇人元首相や岸田氏の地元の広島選挙区(改選数2)で優勢とみられた岸田派現職が、菅義偉(すが・よしひで)官房長官らの支援する自民新人にリードされていることだ。
岸田氏は18日、都内で他派閥の自民候補の応援を行った後、すぐさま広島入り。広島市で行われた現職の決起大会に古賀誠名誉会長らとともに出席した。
派内からも「お膝元の広島で落とせば鼎(かなえ)の軽重が問われる」との声が上がる。選挙に弱いとのイメージがつけばポスト安倍として疑問符がつきかねない。
◇
9日夜、病気療養中の竹下亘会長に代わり竹下派を取り仕切る茂木敏充経済再生担当相は地元・栃木県から車で3時間45分かけ、長野県塩尻市で自民新人の演説会に駆けつけた。
「吉田さんから『どうしても今日こちらに伺えない。大変申し訳ない』とのお話があった。私は必要ならいつでも来ます」
茂木氏はこう語り、2日後も長野市内3カ所で街頭に立った。竹下派にとって長野は特別な意味がある。「参院のドン」と呼ばれた吉田氏の後継が敗れれば、参院自民の主導権を握ってきた同派が「終わったとみられかねない」(陣営幹部)ためで、同派の加藤勝信総務会長も公示日に続き17日に長野入りした。
選挙戦は野党統一候補の国民民主党現職がリードするが、自民新人は「吉田先生の議席を預かった。失うことは許されない」と語る。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
Leave a Comment