双子や三つ子らを育てる「多胎育児」は親の負担が重いとされる。多胎育児の家庭では、どんな一日を過ごしているのか。実際に見聞きして日々の苦労だけでなく、喜びも伝えられないか。そう考えた記者(26)は2月中旬、4歳と1歳10カ月の双子2組を育てている和歌山県内の橘絵理さん(33)の自宅を訪ねた。
【午前8時10分】
姉2人を幼稚園へ送るのは8時半。朝食を済ませた後、歯磨きや着替えなどで慌ただしく時間が過ぎる。きょうだい4人は走ったり、団子状態になったり。父の陽介さん(32)はすでに出勤しているため、母の絵理さんが4人の面倒を見る。
【午前9時30分】
絵理さんが昼食と夕飯の準備を始める。できる限り午前中のうちに食事を仕込む。料理をしている間、弟2人はキッチンを走り回ることも。火をつかっているので、周りに来る時は作業を中断して2人の相手をする。
【午前10時25分】
指をくわえだすと「おねむ」のサイン。「粘りの30分です」と絵理さん。ここで眠らせると昼寝ができずに夕方眠くなって一日のリズムが崩れる。家事が一段落した絵理さんは、ひざの上に2人を乗せて話しかけていた。
【午前11時】
昼食。「集中しているのは5分くらい」という絵理さんの言葉どおり、5分ほどでいすから立ち上がった。フォークやスプーンをまだ上手に使えず、時折手づかみになり、食べ残しが机や床に散らばる。
【午後0時20分】
再びうとうとし始めた2人。静かに見守りながら、眠るのを待っていると、寝息をたて始めた。朝から家事が続いた絵理さんが、ようやく一息つける時間だ。
【午後0時45分】
ゆっくりと話せる時間がやってきたので、絵理さんに聞いた。双子の子育て、何が大変ですか。「(面倒を見る人が)1人しかいないときは、みんなの訴えに応えられないのが大変。やることが多く、倍以上の時間がかかってしまうところかな」
2018年1月には、愛知県で三つ子の育児中の親が次男を畳にたたきつけて死亡させたという事件もあった。絵理さんは「人ごとじゃない」と感じたという。下の子2人を生んだ後、絵理さんも産後うつになった。「自分が頑張らなあかん、って必死になっていた。それができないと、ダメな自分、ダメなお母さんと思った」。産後うつを経験した後は、自分のことも大切にするようになった。
もちろん、多胎育児の喜びもある。「仲良く遊んでいるところをみていたり、一緒にできることが増えていったりとか。もちろん、言葉を覚えていくといった、1人の子育てで感じる喜びもありますね」
【午後2時30分】
姉2人を迎えに幼稚園へ。
【午後3時】
帰宅後、おやつを食べる。さっきまで寝ぼけ気味だった弟2人も、元気を取り戻した。
【午後3時20分】
弟2人が、記者におんぶのお願いにやって来た。1人をおんぶして少ししたら、もう1人をおんぶ。腰やひざを浅く曲げるなど、直立しているよりも疲れる。
姉2人は、同じ部屋で塗り絵をしていた。姉2人にも話しかけてみる。少し恥ずかしそうだったけど、話しかけられることは嫌ではないようだった。きょうだい全員にまんべんなく気を配る難しさを感じた。
【午後4時30分】
取材終了。絵理さんを始め、4人のきょうだいに「ありがとう」と伝えた。
絵理さんによると、普段は5時…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル