入試シーズンが本格的に始まりました。コロナ禍の中で頑張っている受験生たちへ、校長たちからの言葉をお届けします。
校長から受験生へ:鷗友学園女子中学高校・大井正智校長
以前、高3生に受験の時に心がけていたことを尋ねたことがあります。その生徒は「いつも笑顔でいた」と答えました。自分が笑顔でいると、家族を含めた周りの人も明るい気持ちになり、そうした人に囲まれることで、自分もまた楽しい気持ちで受験が迎えられるからと――。周囲の人も思いやるその思いを聞けて、私はうれしかったです。
各地に緊急事態宣言が出ました。感染への心配もあるでしょう。大学入学共通テストはどうなるか。外は寒い……。ついうつむき、猫背になっていませんか。両肩をそらし、胸をはりましょう! 前を向いて、笑顔で進めば、気持ちも前向きになれます。
我が校の入試問題は記述式が多いです。特に国語は漢字、算数は計算問題を除けば記述での解答です。どの教科もきちんと考えて、自分の言葉で答えて欲しいとの思いからです。受験生とは、入試でしかキャッチボールできません。だから、自分の考えをきちんと出せる形にしたい。
人間はみんな△でしょう。それぞれに得意、不得意があって、いろんな考え方を持っている。すべて完璧な「○(正解)」の人なんていない。それなのに入試だからといって、正解を一つにして○をつけるなんておこがましい。△でもいいです。きちんと自分の意見を持って書いたり発信したりでき、ほかの人の意見も聞けて、自分と意見が違う人の人間性を否定しない生徒に集まって欲しい。
うちの学校は「幕の内弁当」です。トンカツ弁当やシューマイ弁当のように、メインの何かだけを売りにしているわけではない。「主要5科」という言葉も使いません。体育や園芸も、友達関係や部活、行事も、学校にあるすべてのものが大切で、それらすべてで「鷗友」なのです。
コロナで休校中も、家庭に土や植木鉢、種などを送り、オンラインで園芸の授業をやりました。体育ではピンポン球を送り、スリッパの裏でも段ボールでもいいから、ラケット代わりにして打つ授業もしました。
首都圏の1都3県が緊急事態宣言下になった今月8日は、部活ごとに集まって、各自が持っているICT(情報通信技術)機器を利用し、感染予防に配慮しながら、どんな活動方法があるかを議論しました。
どのような事態でも、相手を尊重し、自由な発想で新しいものを生み出す。何よりも笑顔でいてほしい。子どもたちを笑顔にするための学校であり、入試ですから。(聞き手・宮坂麻子)
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1957年東京都生まれ。早稲田大学国語国文学専攻科を修了後、国語科講師として私立聖学院中・高(東京都北区)に勤務。85年度に鷗友学園の国語科教諭になり2017年度に教頭、18年度から校長。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル