古いフィルムから「よみがえる声」 視力を失った監督と娘の「革命」

 車いすに乗った母と、車いすを押す娘がレッドカーペットの上を歩いていた。約1万人の大歓声に包まれるなか、病気で目が見えない母は懸命に手を振って応える。娘の目には涙が浮かんでいた。

 母とは、在日朝鮮人2世の映画監督、朴壽南(パクスナム)さん(88)=神奈川県茅ケ崎市。娘は、長女の麻衣さん(55)だ。

 10月、韓国・釜山で開かれたアジア最大級の「釜山国際映画祭」の最終日。2人が監督を務めた新作映画「よみがえる声」が、ドキュメンタリー競争部門で最優秀賞を受賞した。

 「この作品を見た瞬間、ある存在を破壊する力を感じた」

 映画「ゆきゆきて、神軍」などの代表作があり、映画祭で審査委員を務めた原一男監督は授賞の発表でこう述べた。

 「よみがえる声」は、壽南さんがかつて撮影した在日1世らの証言映像をデジタル化し、その過程をまとめた映画だ。

 壽南さんの自宅には、16ミリフィルムで約40年前から撮りためてきた約50時間に及ぶ膨大な映像が保管されていた。

 広島と長崎で原爆被害に遭った朝鮮人、徴用工、朝鮮人元軍属、日本軍の「慰安婦」にされた女性……。

 12歳の時に広島で被爆し…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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