生活に困る若者やひとり親の世帯、外国人労働者といった人たちが、支援団体を通じて割安に公営住宅の空き部屋に入居できるという試みが兵庫県尼崎市で始まった。空室を活用できるという市側のメリットにとどまらない「画期的」な側面があるという。(中塚久美子)
親から虐待、給料奪われる例も
今回の取り組みで尼崎市が提供するのは、空き室となっている市営住宅約100戸。建て替えを6~13年後に控え、入居の募集を取りやめている市営住宅のうち、状態の良い2DK~3DKの部屋だ。生活困窮者らを支援する団体が直接の借り主になる。
家賃は通常、最低でも月2万~3万円かかるが、築50年前後の部屋を未修繕の状態で貸すため、支援団体の支払いは1戸当たり月6500円に抑える。住民税の非課税世帯などへの減免制度で適用される最も低い家賃と同額だ。団体側が修繕費用を負担し、実際に入居者が払う家賃は人によって異なる。
こうした団体の一つで、子どもの自立を支援する「officeひと房の葡萄(ぶどう)」(尼崎市)は4戸を借りる。2戸を18~23歳の女性専用シェアハウスにし、残りの部屋は学習支援などの場と事務所にする。シェアハウスには専属の支援員を置く。
入居はこの夏からで、家賃は光熱費込みで月3万円の予定だ。代表理事の赤井郁夫さん(65)は「単なる住まいではなく、18歳までに受けられなかったケアも提供する場にしたい」と話す。
赤井さんは、生活困窮世帯の子どもを対象にした市の学習支援で指導員だった経験がある。困っている若者が、家族構成や年齢を理由に公的支援からこぼれる姿も見てきた。
ある子は、親から虐待され…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル