兵庫県西宮市の岸辺で、台風で打ち寄せられた流木などのごみを2年間、ひとり片付けている男性がいる。「10年間歩いている散歩道がきれいになっていくのが気持ちええし、運動にもなる。たいそうなことはしてない」。日焼け顔の男性は笑う。
直径30センチほどもある大木や、切り株のような塊。14日朝、海に突き出た人工島の西宮浜の岸辺に、流木が山積みになっていた。
ごみを拾って片付けているのは、対岸の同市泉町に住む坂井喜久さん(71)。きっかけは、2018年9月、列島を襲った台風21号。県内では60人がけがをし、西宮市の西隣・芦屋市では高潮で住宅約300棟が浸水した。
台風一過の数日後、坂井さんが西宮浜沿いを散歩していると、釣りに来ていた男の子が打ち上げられたごみで足を滑らせた。駆け寄ると、男の子の手のひらが少し切れ、「痛い」と顔をしかめていた。
岸辺には、流木やタイヤ、プラスチックのパレットなどが、足の踏み場もないほど大量に流れ着き、散乱していた。すぐさま、ごみ拾いを始めた。
それからは朝、西宮浜を散歩して自宅で朝食をとると、再び西宮浜へ。毎日のように朝9時から夕方まで。1人では運べない、4メートルほどの流木や大きなビニール製の巻物もあった。そこで、清掃活動をする近くのボランティア団体からリヤカーやノコギリを借りた。通りかかる人から手助けしてもらったり、「ご苦労さま」と声をかけられたり。
「声かけられるだけで元気づけられる。面倒だとか手伝って欲しいとかは不思議と思わんな。子どもがけがするのだけは見たくない」
3カ月も続けると、散歩道沿い…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル