9月の台風被害の傷が癒えない関東に、大型の台風19号が非常に強い勢力を維持したまま近づいている。記者は「台風銀座」とも呼ばれる沖縄に2008~09年と、15~18年の2回赴任。沖縄の台風はとにかくパワフル。最大風速54メートル以上の「猛烈な」勢力で直撃することも珍しくない。沖縄県民に、台風接近時の過ごし方を聞いてみた。
「それは、外に出ないことだよ」。那覇市に住む友人の答えはシンプルだった。「ラジオ用の電池とカップラーメンを買いだめして、生鮮品は先に食べてできるだけ冷蔵庫を空にしておくこと」だそうだ。
確かに一番の台風対策は、外に出ないことだろう。沖縄県民のすごさは、その徹底ぶりだ。
まず台風接近の前夜、スーパーやコンビニから食品が消える。停電しても傷まないパンやレトルト食品が人気だ。暴風警報が出ると路線バスが運休し、学校も、民間企業も、県庁や市役所ですら、災害対策の要員を除いて休みになる。
暴風中は、室外機に負荷がかかるためクーラーも極力使わない。
記者が一番驚いたのは、15年8月24日、「辺野古」をめぐる問題について協議するため官房副長官が沖縄を訪れた時のことだ。この日も台風が接近していたため県庁は臨時休業。副長官と副知事の会談は予定通り行われたが、クーラーが使えないため応接室は蒸し暑く、政府関係者や県職員たちはみな汗だくだった。
一部の店舗は営業するが、不意にドアが開くと突風が吹き込むため、自動ドアはスイッチを切って手動で開閉する。朝日新聞那覇総局の事務所が入るビルも、台風が来るたびに警備員がすべてのドアや窓を施錠し、内部からも勝手に開けられなくしていた。
植木鉢や自転車などは家の中に入れ、路上からは立て看板が消える。停電もしょっちゅう起きるため、台風接近前にお風呂や食事を済ませる……。
要するに、災害の時は不測の事態に備えつつ、安全な場所でじっとする、ということだ。自然の猛威を何度も目の当たりにしているからこそのシンプルな答え。ぜひ参考にしたいと思う。(上遠野郷)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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