千葉県内に甚大な被害をもたらした台風15号は、国や千葉県の初動対応の遅れが問題視されている。被害の最前線で対応にあたる市町村との情報共有が進まず、実態把握に時間を要し、住民への早期の支援が十分に行き届かなかった可能性がある。専門家は今回の対応の検証の必要性を訴えている。
台風が千葉に上陸したのは9月9日の未明のことだった。夜が明けると、被害が少しずつ判明し、千葉では22市町村が同日までに災害対策本部を立ち上げた。
一方、県の森田健作知事は登庁はせずに知事公邸で待機していた。知事自身によると、8日から情報収集し、9日も停電やそれに伴う断水についての検討を進めていたという。
県が災害本部を立ち上げたのは10日午前9時のことだった。そして、県が現地への職員派遣を始めたのは発生4日目の12日。国のヘリで上空から被害状況を確認したのも12日になってからだった。
自然災害発生時に最も重要な行政の応急対応について、県議会で追及された森田知事は「応急対応の遅れにつながったとは考えていない」と否定する。
●自治体も“連携不足”
被災に見舞われた自治体は停電や断水、避難所の設営などの対応に追われており、県への連絡が後手後手になったことは否めない。
災害が発生した場合、市町村はネットワークで結ばれている県の防災システムに被害情報を入力し、情報共有を図る。だが、例えば、被害が大きかった南房総市のケースでは、9日に避難所の開設状況と《被害多数。詳細確認中》と報告して以降、次の報告は6日後の15日になった。
市によると、10~13日は電話回線や光回線の通信障害が発生。停電や通信不良が影響して被害の全体像が把握できず、担当者は「報告できるほど(情報が)まとまらなかったこともある」と説明している。
●「対応力向上が必要」
県には災害発生時などに備え、非常用発電機が468台も保管されているが、今回、実際に自治体に貸し出されたのは6台のみ。ほとんど活用されなかった。
森田知事は「県、市町村とも停電対応に追われる中で情報伝達や連携がどうだったのかしっかりと検証していく」と強調する。政府も3日に台風15号への対応を検証する関係省庁の初会合を開き、年内にも報告書をまとめる方針だ。
政策研究大学院大学防災・危機管理コースの武田文男ディレクターは「情報が上がってこなければ、政府や県が早い段階で人を派遣して情報共有を進める必要がある。応援要請のあり方など、きちんと検証して対応能力を向上させる必要がある」と話している。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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