多くの貯水施設に守られた東京都心部、その周辺地域では台風19号による河川堤防の決壊を免れた一方、川沿いの一部低地で雨水を川に流すための排水管から増水した川の水が逆流して浸水する「内水氾濫(はんらん)」が相次いだ。都市部の盲点を突いた災害といえるが、今回の台風では都市部以外でも発生。専門家は「(地理的な)条件がそろえば、日本中どこでも起こりうる」と警鐘を鳴らしている。
東京と神奈川の境を流れる多摩川の南側に位置する川崎市の武蔵小杉駅。台風19号による大雨が降った12日、付近で川の水が堤防を越えることはなかった。しかし、駅の自動改札機は水没、街に泥水があふれた。周辺のタワーマンションの一部では、地下の電気系統が浸水して停電、断水するなどした。東京電力によると、16日午後には変圧器などの設備を改修、完全復旧への道筋をつけた。
市によると、要因は街中に降った雨水を多摩川に排出するための排水管などを通じ、水位が上がった川の水が逆流したことだった。川への最終的な排水口には水門が設置されており、閉じれば逆流を防げたが、街中の雨水を排出できなくなることを懸念して閉じなかったという。市の担当者は「(逆流防止と雨水の排出で)どちらを選択するか判断が難しかった」と話す。
今回の台風では改めて都市部での内水氾濫の危険性が顕在化。東京電機大の安田進名誉教授(地盤工学)は近年の気候変動に触れ、「従来の水防設備の設計を超える雨の降り方になり、整備が追いつかない状況」と危機感を募らせる。都市部では人が密集して住むエリアが堤防と隣り合う低地にまで迫っており、被害が繰り返される恐れもある。
国土交通省によると、平成5年からの10年間で起きた洪水被害を見ると、全国では内水氾濫と、堤防の越水など内水氾濫以外による被害総額の割合は、ほぼ半々で拮抗。しかし、東京だけで見ると内水氾濫が8割を占め、データでも都市型災害であることを物語る。
ただ、都市部でなくとも内水氾濫は発生している。中心部が大規模な浸水に見舞われた宮城県丸森町。中心部は複数の川(の堤防)に囲まれ、背後には山が迫るなど水がたまりやすい条件がそろっていた。
公益財団法人「市民防災研究所」(東京)の坂口隆夫理事は「堤防の整備などハード面の対策には限界があり、(完全に)水を止めることはできない。命を守るため、安全なときに安全な方法で逃げること。津波と同じだ」と話している。
■内水氾濫(はんらん) 大雨で河川の水位が上昇した際、市街地などに降った雨水を川に流すための排水管や下水管を通じて川の水が逆流し、マンホールや側溝などから噴き出て一帯が浸水する災害。一般的には、排水管などの処理能力を超える量の大雨が降り、雨水を川に流しきれなくなって浸水するケースを指すことが多い。「内水」は堤防の内側の土地にある水のことで、河川の水は「外水」。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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