台風19号がもたらした大雨で千曲川の堤防が決壊し、濁流が街を飲み込んだ長野市北部。堤防から水があふれ出してから決壊までわずかな時間だったと証言する住民もいる。「もうダメかもしれないと思った」。住民は恐怖を振り返った。(吉原実)
浸水の被害が激しい長野市穂保地区。14日には一部で水が引き、歩けるようになった場所もでてきた。だが、濁流がもたらした泥が膝上の高さまで広がる。
上空では地元消防のヘリが行き交い、警察官らが孤立住民らの捜索にあたっていた。
りんご農園を営む男性(62)は、床上浸水した自宅の様子を見に戻ってきたという。床一面に泥が覆い「どこから手をつければいいのか」と嘆く。
地区に避難指示が出されたのは12日午後11時40分ごろだった。その後、千曲川は、増水して氾濫危険水域を越えたとみられ、70メートルにわたって堤防が決壊し、地区に濁流が流れ込んだ。
男性は12日午後8時ごろには避難したが、携帯電話と財布だけを持ってきただけだった。深夜、決壊したニュースを耳にした。「もうだめかと思った」。男性は振り返る。
ただ、自宅は流されずには済んだ。周辺には自宅へ戻ることができない避難者も多く、男性は「自分家の状況を例に、みんなが何を必要としているのか把握したい」と話した。
「越水から決壊まであっという間だった」。主婦の土屋栄美子さん(67)も恐怖を振り返る。13日午前1時ごろ、越水を受けて避難したが、14日朝、氾濫後に初めて自宅に戻ってきた。外壁は高さ約1・5メートル、家の内部には約50センチの高さまで泥が押し寄せた。土屋さんは「この辺りはまだ良い方。決壊現場近くでは2階まで浸水している」と話す。
これまで何度も氾濫を繰り返してきた千曲川。河川敷一帯に川の水が流れ込んだこともあったというが、土屋さんは「住宅街まで水は来ないと思い、逃げ遅れた人が多かったと思う」と話した。
水は完全に引かず、長期化も懸念される住民の避難生活にも不安が浮かぶ。
今も200人以上の住民が身を寄せる「北部スポーツ・レクリエーションパーク」(同市三才)。食料や水の救援物資は確保されているものの、暖房は完備されていない。被災地ではこの後、雨が降るとの予報もあり、夜間の冷え込みも想定される。「冬用ジャンパーを用意するなど、手を打たないといけない」。管理する男性は頭を抱えた。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース