合流決裂は国民民主のマリッジブルー? 結婚なら比例10議席増の試算(産経新聞)

 立民太(りつ・みんた)さんから、プロポーズされた国民子(こく・みんこ)さんは悩んでいた。同棲期間を経て、いよいよ結婚ということになったのだが、先のことを考えると踏み切れない。

 「一緒になれば、使えるお金も増えるし、家賃だって安く済む。2人で協力すれば、きっと、なんでもできるさ」という立民太さんの言葉を、国民子さんは額面通りに受け取れず、逡巡していた。

 そして、こう思う。「だって、去年、ケンカしたときには、私にいじわるしたじゃない。私の話を聞かないで、俺の言うことは何でも聞けっていうし。それに、私はあなたの名字になりたくないの」と。

 立民太さんは立憲民主党、国民子さんは国民民主党のことだ。

 「同棲」を「統一会派」に、「結婚」を「合流」に、「お金」を「政党交付金」に、「家賃」を「経費」に、「なんでもできる」を「選挙で勝利して政権が取れる」に置き換えればいい。「ケンカ」は「昨年の参院選」、「何でも聞け」は「脱原発などの政策を丸のみしろ」、「名字」は「党名」と読み替えればいいのだ。

 立民と国民の合流協議を見て思うのは、なんだか結婚を控えたカップルのようだということだ。「早く結婚したい」という気持ち(合流推進派)と「私の言うことも聞いてくれないのは心配」(合流慎重派)という相反する気持ちの間(党内)で、心は揺れ動く。まるで、マリッジブルーである。

 立民は国民に、通常国会召集日の1月20日までに合流の可否を決めるよう求めていたが、1月21日の両党幹事長会談で合流を当面見送る方針で一致した。事実上の交渉決裂といえる。これまでの幹事長間の交渉で合意に至った項目は「ご破算に戻すつもりはない」(立民の福山哲郎幹事長)といい、現在の野党統一会派の枠組みで国会での共闘や選挙協力を深めることは確認した。

 合流話が持ち上がったのは昨年12月。永田町界隈で、この時期の政党合流、新党結成は年末の風物詩となっている。国が政党に助成する「政党交付金」の基準日が1月1日であることを念頭に置いた動きで、それまでに「国会議員5人以上」「前回衆院選か前回・前々回参院選で2%以上得票」の政治団体であれば、助成の対象となるからだ。

 もちろん、各政党に配られる交付金の多寡は議員数や国政選挙の得票数によって決まる。規模が大きい政党の方が、より多く受け取れる。

 合流協議は、年明けの通常国会冒頭に安倍晋三首相が衆院解散に打って出るとの憶測も踏まえた動きだった。立民と国民が合流すれば、次期衆院選でもメリットはある。

 昨年7月の参院選比例代表の各党の得票数を衆院選比例代表(定数176)に当てはめ、立民が合流を呼びかけた国民、社民の3党が合流した場合と、個別で候補者を擁立した場合を想定して試算すると、3党が合流した場合は52議席を獲得することになり、3党が個別に獲得した議席を合計した場合(42議席)より10議席多くなる。

 選挙区(定数289)でも、参院選同様に3党に共産などを加えた野党5党派が統一候補を擁立すると想定して試算すると、平成29年の前回衆院選で旧民進系、共産、社民などが得た60議席を13議席上回る73議席を獲得できる。

 それでも、合流に踏み切れなかったのはなぜなのか。立民、国民幹事長会談の前日の1月20日、国民は両院議員総会で当面合流を見送ることを決めた。拙速な合流に反対する意見が大勢を占めたのだ。

 そもそも立民と国民は元々同じ政党を構成する「夫婦」だった。互いの違いや不都合に目をつぶっていたが、我慢できなくなり、夫婦関係が破綻した。

 前回衆院選を前に旧民進党が小池百合子東京都知事率いる希望の党への事実上の合流を決めた際、小池氏が安全保障関連法や憲法改正への姿勢を公認への「踏み絵」としたことに、枝野幸男元官房長官らが反発して結党したのが立民だ。

 立民のある幹部はこう漏らした。「2年前までお互い一緒にやってきたのに。一回別れるとやっぱり難しいんだな。感情的なしこりがお互いある」

 男女の仲も、政党の関係も、一度こじれるとなかなか難しい。(政治部次長 小島優)

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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