コロナ禍で収入が減った個人事業主らを支援する持続化給付金を国からだまし取ったとして、警視庁は2日、いずれも独立行政法人国立印刷局(東京都港区)職員の大保(おおぼ)勇也(21)=埼玉県川口市芝下1丁目=と椎葉崚(りょう)(20)=東京都北区滝野川2丁目=の両容疑者を詐欺容疑で逮捕し、発表した。
捜査2課によると、2人は6月、収入が減った個人事業主を装い、持続化給付金の専用サイトで申請手続きをし、それぞれ国から100万円ずつだまし取った疑いがある。大保容疑者がインターネット上で知り合った男から方法を習い、椎葉容疑者を勧誘したという。調べに対し、2人は容疑を認めているという。
2人は紙幣やパスポートを製造する工場に勤務しており、同世代の同僚ら数十人にも不正受給を勧めていた。うち一部は誘いに乗り、実際に申請したという。大保容疑者がそうした同僚らから「手数料」名目で金銭を受け取っていた疑いもあるという。
国立印刷局は2003年4月、財務省印刷局を母体に設立。職員は国家公務員で、紙幣やパスポート、印紙、郵便切手などの製造を担う。警視庁によると、持続化給付金の詐取容疑で国家公務員が逮捕されるのは初めてという。
職員2人が持続化給付金の詐取容疑で逮捕されたことを受け、国立印刷局の小林毅久理事らは2日、記者会見を開き、「コロナ禍で苦しむ事業主のための制度を国家公務員が悪用したのは誠に遺憾」と陳謝した。2人の処分は、刑事処分を踏まえて検討するという。
警視庁によると、2人は複数の同僚に不正受給を勧めていたとされる。この中には、実際に申請をした人もいたという。局内での広がりが疑われることについて、鈴木久直総務部長は「捜査に支障があるため答えられない」と述べる一方、ほかに関与した職員がいないか調査すると説明。再発防止策として、コンプライアンスのマニュアルの充実▽注意喚起を目的とした職員へのメッセージの発出――を挙げた。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル