性的少数者のカップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」が全国の自治体に広がるなか、同性カップルの結婚式やフォトウェディングを受け付ける式場が増えつつある。同性婚は法的に認められてはいないが、当事者や先行する施設はさらなる浸透を期待する。
「迷う人の背中、押したい」
「もう少し肩を寄せて。そうそう、良い感じ!」
よく晴れた昨年11月初旬の昼下がり。2人の男性が伊香保温泉(群馬県渋川市)の石段街を紋付きはかま姿で歩いていた。その様子を、カメラマンが写真に収めていく。
2人は星野貢汰さん(31)と松原博英さん(39)=群馬県高崎市。交際5年目の同性カップルだ。毎年恒例だった2人での旅行がコロナ禍でかなわなかった。「何か記念になるものを」と、ウェディングフォトを撮ることにした。この日は紅葉が見頃を迎えた河鹿橋や石段街周辺を散策。雑談も交えて時折笑いも起きるなか、撮影は進んだ。
星野さんと松原さんは「同性のカップルがどう付き合っているのか気になる人も多いと思うが、男女のカップルと同じ。撮影した私たちを見て『こんなカップルがいるんだ』と、迷っている人の背中を押すことになれば」と話す。
フォトウェディングは、結婚式のプロデュースなどを手がける「シェアウェディング」(高崎市)が担った。顧客の希望に沿った企画が売りで、「谷川岳で写真を撮りたい」というアニメファンのために現地でコスプレ撮影をしたこともある。
性的少数者向けの相談窓口も設けた。パートナーシップ宣誓制度の広がりもあり、代表の桜井康幸さん(46)は「ニーズはあるはず」と感じていた。ただ、受け入れる側に十分な知識がなく、性的少数者向けのプランを出せない式場や会社は少なくない。「業界も意識改革が必要。窓口があることで『できるならやってみたい』と思ってもらいたい」と期待を込める。
神前や仏前でも
埼玉県川越市の最明寺は2020年5月、市が宣誓制度を導入したのをきっかけに結婚式の受け付けを始めた。
最明寺での挙式は、本堂で阿弥陀如来像を前に、カップルが門出を願い出て始まる。指輪の代わりに、LGBTQを象徴する虹色の数珠を僧侶が2人に授け、仏前で誓いの言葉を述べる。式は2人だけのものから、100人程度の参列まで対応できる。価格は神社での神前式の相場と同じ、20万円からだ。
戒律で同性愛を禁じる宗教は多いが、仏教では否定していない。副住職の千田明寛さん(33)は15~16年、僧侶としてインドの寺院へ留学した。「インドに暮らす人は、人種も宗教も言語も多様。他者との違いを受け入れるのが当たり前の風土が素敵だと感じた」という。「仏教は、人種や性別関係なく全てが平等と説いている。生きとし生けるもの全てが幸せであれと考える宗教で、性的少数者を差別することはない」と話す。
「お寺=お葬式」のイメージ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル