同性どうしの結婚を認めない民法などの規定は、法の下の平等に反する――。同性カップルなどが結婚の自由を求めた一斉訴訟で、初めての一審判決は違憲判断を示した。
17日の札幌地裁判決は、同性婚を認めていない現行民法や戸籍法について、婚姻にかかわる憲法24条や幸福追求権を保障する13条に違反しないが、14条の「平等原則」に違反するという結論を導き出した。
原告側は14条違反の主張のほか、24条と13条により「婚姻の自由」が異性間、同性間にかかわらず、すべての人に憲法上の権利として保障されていると主張。一方、国側は「憲法は同性間の婚姻を想定していない」と反論した。
判決は、婚姻制度や同性愛に関する知見を歴史的に考察した。明治期以降、同性愛は精神疾患とされ、憲法が制定された戦後初期も同性婚は許されないものと考えられていたと指摘。また、1947年の現行民法への改正でも、婚姻は社会通念による夫婦関係を築く男女の精神的・肉体的結合であるとされ、同性婚は認められないものとされたとした。判決は、憲法24条は異性婚を定めたものと判断し、違憲性を認めなかった。
一方で、判決は「性的指向」について現在の精神医学や心理学の見解から「人の意思によって選択、変更しうるものではない」と指摘。憲法14条後段に示された「性別、人種などと同様のもの」とした。
配偶者の相続権など、男女の婚姻で生じる法的効果は、同性カップルにとっても「重要な利益」だと指摘し、異性間と同性間で差別があることは許されない、と結論づけた。
こうした判断の背景として、国内外で92年ごろまでには同性愛は精神疾患ではないという知見が確立し、同性婚を否定した科学的根拠は失われたことを挙げた。また、国内で同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体が増え、世論調査などで同性婚や同性カップルに対する法的保護への肯定的な意見が高まったことや、海外での同性婚の法制化の状況も考慮した。
同性婚に対して、国内で否定的な意見があることは認めつつ、「圧倒的多数者の異性愛者の理解または許容がなければ、法的効果を一部であっても受けられないのは同性カップルへの保護に欠ける」と非難。婚姻制度は国会が国民感情を踏まえた総合判断で定められるとしても、異性カップルと同性カップルが受けられる法的利益に差異がある状況について、「国会の裁量権の範囲を超え、合理的な根拠を欠いた差別にあたる」として、14条違反を認定した。(磯部征紀)
札幌地裁判決の要旨
同性同士の結婚が認められないことを「違憲」と判断した17日の札幌地裁判決の要旨は次の通り。
【憲法24条(家族生活での個人の尊厳と両性の平等)などに違反するか】
同条は異性婚について定めたとするのが相当だ。憲法が制定された戦後初期も同性婚は許されず、「両性」など男女を想起させる文言を用いていた。
幸福追求権を定めた憲法13条で、同性婚に関わる制度を求めることが保障されているとするのも困難だ。
【憲法14条(法の下の平等)に違反するか】
結婚は身分関係が公証され複合的な法的効果を生じさせる法律行為だ。結婚の法的効果を享受することは重要な法的利益といえる。異性愛者と同性愛者の差異は、人の意思により選択・変更できない性的指向が異なるのみで、法的利益は等しく享有しうる。
同性愛が精神疾患ではないとする知見は1992年ごろまでに確立し、同性婚を否定した科学的、医学的根拠は失われた。結婚の規定は夫婦の共同生活の保護も目的とし、憲法24条は、同性愛者の共同生活への一切の法的保護を否定する趣旨まではない。
圧倒的多数派の異性愛者の理解や許容がなければ同性愛者が利益の一部であっても受けられないのは、あまりにも保護が欠けると言わざるをえない。
同性婚などの制度は立法府の裁量判断を待たなければならず、社会状況を踏まえ同性同士に規定を適用しないことが直ちに合理的根拠を欠くとはいえない。
だが、いかなる性的指向の者でも享有しうる法的利益に差異はない。日本と諸外国での同性愛者と異性愛者の区別を解消する要請の高まりは考慮すべきだが、否定的な価値観を持つ国民が少なからずいる事情を酌むのは限定的にすべきだ。
同性愛者に、結婚の法的効果の一部ですらも享受する法的手段を提供しないことは、立法府の裁量権の範囲を超えたものといわざるを得ず、その限度で合理的根拠を欠く差別にあたり、憲法14条1項に違反する。
【国会の立法不作為にあたるか】
日本での同性の登録パートナーシップ制度の広がりは2015年10月以降だ。国民が同性婚に肯定的になったのは、比較的近時と推認される。国会がただちに違憲状態を認識することは容易ではなく、規定を改廃していないことが違法とはいえない。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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