半世紀前、司法修習生の終了式で、同期のために発言した結果、最高裁から罷免(ひめん)され、法律家の資格を得られなかった青年がいた。2年後に再び修習生に採用され、弁護士として活動する阪口徳雄(とくお)さん(78)=大阪弁護士会=だ。この春、同期らと「司法はこれでいいのか。」(現代書館、税込み2200円)を出版した。司法の独立が揺らいでいないかと警鐘を鳴らす。
「今じゃあんなこと、ようやらんけどね。若くないとできん」。阪口さんは笑う。「あんなこと」は、50年前に起きた。
1971年4月5日。司法試験に合格し、裁判官など法律家になる人が受ける司法修習(当時は2年間)の終了式が開かれた。修習生として出席していた阪口さんは、祝辞のために登壇した研修所長に直訴した。
「不採用者に10分だけ話をさせてあげてほしい」
この年の3月、司法修習で同期だった裁判官志望の7人が採用されなかった。よほどの理由がない限り、希望通りに採用されるのが通例だった。同期の代表として、終了式で発言するよう促された阪口さんは、ともに机を並べた仲間を思い「何も言わないままでいいのか」と、腹を決めた。
だが、研修所は、阪口さんの…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル