松島研人、藤牧幸一
NTTドコモの通話料無料プランが悪用された組織的詐欺事件で、通信事業会社「BIS」(東京都新宿区)が、電話の発信量を抑えるプログラムを使い、東京以外に名古屋や大阪からも発信していたことが分かった。愛知県警は、通信設備に負荷がかかり電話がつながりにくくなる「輻輳(ふくそう)」を防ぐ狙いがあったとみて調べている。
組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺など)の疑いで逮捕されたのは、BISの実質的経営者の渡部雅史容疑者(42)=東京都新宿区=、社長の福沢正文容疑者(40)=同西東京市=ら24~65歳の男女15人。
県警によると、BISは、固定電話などの電話番号を割り振る通信事業者(東京都港区)と契約し、通話時間に応じてドコモからこの事業者に支払われる「アクセスチャージ」(回線使用料)の一部をBISに還元させていた。BISは4年半で少なくとも30億円を得ていたという。
渡部容疑者らは「かけ放題プラン」の携帯電話を500回線分契約し、「ゲートウェー」という特殊な装置にSIMカードを差し込み、自動発信を繰り返した疑いがある。
一方で、大量の発信をすると輻輳が起きる恐れがあり、ドコモも「日頃から通信状況をモニタリングし、異常があれば必要な対応をしている」という。実際にドコモはBISに複数回、警告文書を出し、一部の回線の使用を止めたという。
捜査関係者によると、渡部容疑者らは発信量や時間を制御するプログラムを使用。ゲートウェーは東京のほか、愛知や大阪の関連会社にも設置していた。負荷を分散させて輻輳を防ぎ、不正が発覚しないようにしていたとみられる。
ドコモは取材に、事件をめぐるアクセスチャージの金額は通信の秘密もあり把握できないとし、「返還を求めるかは、捜査の進展を見ながら対応を検討する」と話した。
通信行政に詳しい神奈川大学の関口博正教授(会計学)は、「これまで摘発事例がなかったということは、通信事業各社の隙を突いた、想定外の事件だったのではないか。通信各社が本格的に調査を進めるなかで新たな不正が見つかる可能性もある」と話す。(松島研人、藤牧幸一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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