「名品」とは何ぞや。重要文化財? 美術の教科書に載っていた? 「昭和チックで、権威主義的な言葉。何を『名品』とするかは時代で変わるし、人によっても違う」と、兵庫県立美術館の西田桐子(きりこ)学芸員。「超・名品展」と銘打つ開館50周年記念展は、そんな枕ことばに対する一つのアンチテーゼのようだ。
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明治中期~1970年代の約100年を対象に、作品にまつわる物語やその評価を今日の視点から語り直す今展。のっけから写実の画家・高橋由一(ゆいち)が選んだ「豆腐」という画題の珍奇さに面食らう。焼き豆腐は焦げすぎ、まな板には包丁の跡が刻まれ、豆腐の水分でぬれた木のにおいが立ち上ってきそう。「そもそも大豆加工品というところが『死んだ自然』と呼ばれた静物画のパロディーのようでもある」と西田さんは評する。
描かれた壺(つぼ)の作者がバーナード・リーチかをめぐって議論が続く岸田劉生の「壺」も、静物画の重要作だ。同じ壺は思索的な「壺の上に林檎(りんご)が載って在る」にも登場するものの、引っ越しの時に取れてしまったのか「壺」にあった取っ手は消える。高橋の「鮭(さけ)」や劉生の麗子像ほど有名ではなくとも、作品を前にあれこれ語りたくなる謎は「名品」の魅力に違いない。
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人の美意識は時代を映し、時に作品の評価を変える。第1回文展で最高賞を受けた和田三造「南風」は、人物の関係や風になびくシャツの不自然さなど、若描きゆえの欠点も指摘された。西田さんは「昔はしょうもない作品と思ったけど。広告でこういう上半身裸で腹筋の割れた男性像をよく見かけるようになった今見ると、えらいかっこよく見えるんですよね」。今展では、堂々のポスター起用だ。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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