茨城県取手市が、高校野球の甲子園優勝監督で名誉市民の故木内幸男さん追悼の催しを開くにあたり、木内さん側の了解を得ないまま開催費用をふるさと納税で募り、木内さん側の反対で募金を中止する事態になった。市は不手際を認めて謝罪。寄付は返還する一方、催しは予定通り開きたいとしている。
木内さんは、取手二と常総学院を率いて夏と春の甲子園で計3度全国制覇を果たした。2012年に同市の名誉市民となり、20年11月に89歳で亡くなった。
催しは「ありがとう 木内監督」と題し、12月18日に同市内の市立市民会館で開く予定。木内さんと甲子園の決勝で2度対戦したPL学園(大阪)元監督の中村順司さん(76)と、常総学院出身でプロ野球横浜DeNA2軍監督の仁志敏久さん(51)ら木内さんの教え子で現役監督の5人が、木内さんの思い出などを語り合うトークショーが中心になる。
市は、開催費用の258万3900円をインターネットで資金を集めるクラウドファンディング(CF)型ふるさと納税で寄付として募ることにして、予算計上した。9月の市議会で議決され、今月4日にふるさと納税サイト「さとふる」で募金が始まった。
市によると、5日夕、催しへの協力者を通じて木内さん側から、CFの実施を知らされておらず賛同できない旨が伝えられた。市の担当者が電話で木内さん側に確かめたところ、「寄付募集はやめてほしい」と告げられた。
さらに翌日、市幹部らが面会し制度の説明などをしたのに対し、木内さん側は「(木内さんの)名前を使用しての寄付募集になる。仮に寄付を『少年野球』や『青少年育成』のために使うなら良いが、このイベントのためだけの寄付募集はやめてほしい」と改めて伝えられたという。
CFでの資金調達の狙いについて、市は「財源確保のほかに、全国の木内さんのファンの方に共感いただき、支援した満足を感じていただきたい」と説明していた。一方、木内さん側への説明については、「催しの開催と趣旨については相談し、ご理解いただいていたが、CFについては財源に関することなので説明しなかった」としている。
CFは6日夕に中止されたが、1件1千円の寄付があり、市は返還の手続きを進めるという。
同日に記者会見した市の井橋貞夫・政策推進部長は「すべて私どものミス。事業を応援していただいている方々にご迷惑をかけ、深くおわびする」と謝罪。「事業については、期待に沿えるよう進めていきたい」と述べた。(福田祥史)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル