薄暗い貯蔵庫を開けると、年季の入った木製の樽(たる)がずらりと並ぶ。ゆっくり息を吸ってみると、フルーティーで重厚な森の香りが五臓六腑(ろっぷ)に染み渡った。
これが100年続くジャパニーズウイスキーの繊細な香りか。樽に詰まった無色透明の原酒は、もうすっかり琥珀(こはく)色に染まっているのだろう。アルコールや水分が蒸発し、原酒は樽の中で少しずつ減る。職人たちは、このことを「天使の分け前」と呼んでいるらしい。お酒好きにはたまらない、ぜいたくな異空間に魅了された。
ここは大阪府島本町にある「山崎蒸溜(じょうりゅう)所」。サントリーが誇る、日本初のモルト(大麦麦芽)のウイスキーを製造・出荷した発祥地だ。1923年10月、この地の良質な水と湿潤な環境にほれたサントリー創業者の鳥井信治郎氏が、ウイスキーづくりを始めてから、今年で1世紀を迎えた。
日本初のウイスキー原酒が眠る山崎蒸溜所
薄暗い貯蔵庫に入ると、芳醇(ほうじゅん)な香りに包まれた。積み重ねられた樽(たる)の刻印を見ながら隙間を歩いていくと、片隅に「1924」と記された操業開始当時の樽が置かれていた。 熟成の長い歴史と向き合うようにシャッターを切った。ウイスキーも写真も、時間を閉じ込めて、その深さを楽しむ行為だと思う。(筋野健太)
エントランスや山崎ウイスキ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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