新聞社から名誉毀損(きそん)にあたる記事の配信を受けて「ヤフーニュース」に載せたヤフー(東京)の責任の有無が争われた訴訟の判決が29日、東京地裁(中島崇裁判長)であった。判決は、記事が新聞社の操作だけで自動掲載された経緯を踏まえ、ヤフーの賠償責任を否定した。
原告は俳優の山本裕典さん。2020年7月、東京スポーツ新聞社が自社サイトで「よからぬうわさも多い男性と組んでパーティーを開いた」などと報じ、ヤフーニュースにも掲載された。判決は内容は「真実でない」として名誉毀損(きそん)を認め、東スポには165万円の賠償を命じた。
ヤフーの責任については、問題の記事は、事前に契約を結んだ新聞社が直接入稿できる仕組みを使って配信し、自動的に掲載されただけだと指摘。ヤフー側の判断で「トピックス」としてトップページに載せたり、アルゴリズムを使って「おすすめ記事」に表示したりはしておらず、「ヤフーの意思で流通過程に置かれたと評価するのは難しい」とした。
そのうえで、他人の権利を侵害する情報を仲介しても、その情報の「発信者」でない限りは責任を負わないとするプロバイダー責任制限法を適用し、ヤフーの責任を否定した。
転載記事をめぐるヤフーニュースの責任は、いわゆる「ロス疑惑」で無罪判決が確定した故・三浦和義氏の遺族が「手錠姿の写真を掲載され、感情を害された」と訴えた訴訟でも問題になった。東京地裁は11年、「ヤフーも写真が掲載されないよう注意し、速やかに削除すべき義務を負う」と責任を認め、確定した。(田中恭太)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル