地球温暖化の影響で、1年間に降る雨量の変動幅が増大している。いわば「降るときは大雨に。降らないときはカラカラに」といった状態だ。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や気象庁は「洪水だけでなく、渇水が起きるリスクも高まっている」と警告する。深刻な水不足のリスクに、どう備えればいいのか。(伊藤隆太郎、グラフィック=米沢章憲)
水資源工学が専門で京都大学工学部長を務める立川康人教授は、悩ましさを打ち明ける。「洪水と渇水の両リスクが高まっているのに、渇水への危機感は薄くなりがちだ」
近年、毎年のように全国各地で豪雨による被害が発生し、注目される一方で、水不足を警戒する声はあまり聞こえてこないという指摘だ。
降水量のブレ拡大、「降る」「降らない」どちらも極端に
ただし、そのリスクは高まっている。世界の平均気温は100年間に0・74度上昇した。日本の気温上昇はこれを上回り、100年間で1・3度に達する。気温が上昇したことで、雨の頻度や強さ、降る場所や季節といった降雨パターンが複雑に変化し、雨が降るときと降らないときの差が極端になっているという。
その結果、1日に100ミリ以上の大雨が降る日が増加しているのに対し、1日の雨量が1ミリ未満の「無降水日」も増えている。気象庁の記録では、年間の無降水日はこの100年の間に平均で約10日増え、約240日から250日へと増加した。
渇水のリスクを高めるのは、雨量の変化だけではない。気温が上昇して蒸発量が増え、ダムや川、土中から水が失われる速度も増している。冬場の積雪も減る傾向で、雪解けも早まり、毎年春の水不足の傾向が各地で顕著になっていると立川教授は指摘する。こうした傾向は今後、さらに強まると危惧されている。
水不足が深刻化した場合の影響は広範囲に及ぶ。火力や水力発電には設備の冷却に多量の水を必要としているし、断水となると病院では患者の生命に直結する。首都圏の水不足は、国家機能の低下にもつながりかねない。
持続可能な社会のためには…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル