和歌山県紀の川市で平成27年、小学5年の森田都史(もりた・とし)君=当時(11)=を刺殺したとして、殺人罪などに問われた中村桜洲(なかむら・おうしゅう)被告(26)の控訴審判決公判が16日、大阪高裁で開かれた。和田真裁判長は中村被告の完全責任能力を認定し、責任能力を限定的と判断していた1審和歌山地裁の裁判員裁判判決を破棄。一方、1審の量刑は犯行の状況や動機などから判断されており妥当だとして、改めて1審と同じ懲役16年を言い渡した。
1審判決は、被告が統合失調症か妄想性障害による心神耗弱状態にあり責任能力は限定的と判断していた。控訴審では高裁が職権で精神鑑定を実施。鑑定した医師は被告について、対人関係を築くことが難しい発達障害の一種「自閉スペクトラム症」で症状は軽度だとする、1審と異なる鑑定結果を示していた。
和田裁判長は判決理由で、1審の精神鑑定について「無視しがたい不整合があり、動機の解明にも至っていない」と指摘。新たな鑑定結果に基づき責任能力の程度を検討した。その結果、被害者が悪人だとする妄想を被告が抱いたのは自閉スペクトラム症の影響だったとしながらも、「殺害が違法だと理解できる程度の判断能力はあった」と述べ、完全責任能力を認定。1審判決を破棄した。
一方、懲役16年とした1審の量刑判断は「心神耗弱かどうかにとらわれず、犯行の様態や動機などを考慮した」と指摘。改めて量刑を検討した高裁も、恨みを動機とする同種事件の量刑や1審が裁判員裁判だったことを考慮し「改めて同じ量刑が相当だと判断した」と述べた。
判決後、大阪市内で記者会見した森田君の父親(71)は「完全責任能力を認めたことには感謝したい」としつつ「量刑には納得できない」と話した。
判決によると、中村被告は27年2月5日、自宅近くの空き地で、自閉スペクトラム症の影響で自身に嫌がらせをしていたと考えていた森田君を刃物で胸を切りつけるなどし、殺害した。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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