和歌山市内の紀の川にかかる「六十谷(むそた)水管橋」(上水道)の一部が落下し、市北部で断水が続いている問題で、市は8日中の送水開始をめざすと発表した。9日朝には家庭で使えるようになる見込みだという。
尾花正啓市長が4日夜に記者会見して発表した。水管橋から約40メートル離れた県道の橋に、水管を通す応急工事を6日に着工できるめどが立ったという。8日中に配水池に送水することをめざすという。
市によると、市北部約6万世帯(約13万8千人)のほとんどで断水しており、4日午前7時から小学校など22カ所に給水所が設けられている。断水している地域の小中学校などは臨時休校となっている。地域には人工透析を行っている医療機関が五つ、救急指定病院が二つあるが、給水車を優先的に回し、通常通りの診療をしているという。
スーパーやコンビニでは飲料水を買い求める人が集中し、売り切れたり、「1家族あたり2ケースまで」などと販売制限を設けたりする店が出ている。
市によると水管橋は1975年の建設。2016年に耐震の落橋防止工事を実施したといい、尾花市長は4日午前の記者会見で「老朽化そのものが落橋につながったとは考えられない」と話した。先月、目視での点検では異常はなかったという。原因はまだ分かっておらず、市は早急に調べるとしている。
水管橋は川の南側にある加納浄水場(和歌山市松島)と市北部をつなぐ。長さ546メートルで、直径90センチの水道管が2本通っている。3日午後3時45分ごろ、加納浄水場で異常を検知。橋の中央部分の59メートルが落下しているのが確認された。
近畿大経営学部の浦上拓也教授(公益事業論)は「地震や強風など外的要因が考えにくい状況下での落下で、通常では考えられない事故だ」と話した。「同様の水管橋は全国にあって、それらを擁する自治体からの注目度も高いはずだ」として、点検のやり方を含めた検証を求める。
また、浦上教授は「災害に対する危機管理意識をもって、別ルートでループ管を設定したり、近接自治体と緊急時に水のやりとりをする連絡管の整備協定を結んだりする対策をしていれば、市民への上水供給の義務を果たせていたのではないか」とも話した。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル