編集委員・永井靖二
和紙の原料「楮(こうぞ)」を育てる高知県の山里の暮らしを描いた記録映画「明日をへぐる」(今井友樹監督、73分)が15日から、関西で上映される。日本文化を支える和紙に不可欠な素材とされながら、生産者の多くが90歳代という現実を1年半かけて取材した。
「へぐる」とは、蒸した楮の樹皮から外皮を刃物で削り取り、繊維質だけを残す作業。楮の産地、高知県いの町吾北地区で使われている言葉だ。今井監督は2019年10月から同地区に通い、楮の栽培や加工の様子とともに、生産に携わる人々の現状を記録した。
主要な取材先の農家、筒井良則さんは当時92歳。代々守ってきた楮の株は樹齢80年を超すものもあった。急斜面の株を手入れし、1年かけて伸ばした幹を収穫する様子や、集めた幹を家々が共同で蒸す作業などを描きながら、支え手が年ごとに欠けていく実態、それでも明るい日々のなりわいを作品はとらえている。
今井監督は「一人一人の手作業のたたずまいは、受け継がれてきた山里の歴史が凝縮されたかのように美しかった」と話す。和紙がなければ成り立たない、文化財の修復作業の様子も併せて記録した。
15~28日、京都市下京区の「京都シネマ」(075・353・4723)、16~29日、大阪市淀川区の「第七藝術劇場」(06・6302・2073)、いずれも一般1800円(当日)など。問い合わせはPalabra(03・5937・2231)。(編集委員・永井靖二)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment