全国の中学校で、学期ごとの中間や期末試験といった定期テストを見直す動きが出ている。九州では、福岡県の須恵町立須恵中が本年度から、年5回の定期テストを6月と11月の2回に減らし、試験中に自学用ノートの持ち込みを認めるようにした。進学などで参考にされる通知表のためのテストになっている現状から、生徒の学ぶ意欲を高めて基礎学力の定着、向上を目指す実験的な取り組みとして注目される。
2学期制を導入する須恵中は生徒数約500人の中規模校。3年前に着任した栗原美喜男校長(57)は、どの学校でも実施している定期テストの在り方に疑問を感じていた。「卒業直前にもあるがこの時期だと成績に反映されず、むしろ入試の妨げになっている」。テストの意義を問い直そうと考え、定期テストの全廃を教員に提案した。
驚く教員たちと議論を繰り返し、成績評価のためにも各学期1回ずつのテストは残すことにした。「では、教科書やノートも持ち込んではどうか」。あえて極端な方針を示し、議論を始めた。再び教員たちと意見を重ね、自ら学ぶ意欲の向上という趣旨に合致させるため、ノートの持ち込みに限って認めることにした。
定期テストの回数が減っても、教員の仕事量が減ったわけではない。生徒の理解度を確認するために教科の単元ごとの小テストを繰り返し、定期テストでは自学ノートを見直しただけでは解けない設問も考えなければならない。「教員の意識も変わってきている」と栗原校長は手応えを語る。
1回目の定期テストは6月に実施。生徒の反応は「英単語を書いただけのノートは役に立たない」「問題量が多く、覚えておかないと時間が足りない」。一夜漬けでの高得点は難しく、3年の矢野優那さん(15)は「深く充実した自学に変わってきた」と話した。
定期テストは学習指導要領で規定されておらず、実施の義務はない。文部科学省も「どのように生徒を評価するかは各校の判断」とする。全国では東京都千代田区立麹町中や世田谷区立桜丘中、金沢市立西南部中が定期テストを廃止。単元テストなどで生徒の課題認識や成績評価につなげている。西南部中の担当者は「生徒が自主的に学ぶ力を大切にしたい」と強調する。
須恵中の栗原校長は「変化する時代にどう対応していくか、生徒も教員も考えながら学ぶ必要がある。新たな試みの定期テストで、課題が出てくれば修正を加えるなど柔軟な姿勢で臨む」と話している。 (四宮淳平)
学ぶ過程重視へ転換
福岡教育大の鈴木邦治教授(教育経営学)の話 須恵中のような定期テストの見直しは、テスト結果を重んじる従来の教育から、学びの過程を重視する手法へと転換する動きといえる。テストの回数が減って準備期間が長くなりノートを持ち込めるようになったことで、生徒たちには効果的な復習や級友の学び方に目を向けるという意識の変化も芽生えるだろう。知識や技術がどんどん新しくなる現代にあっては、学び続ける力を身に付ける必要がある。何のために学ぶのかを問い直し、改革していく姿勢が学校現場に求められている。
西日本新聞社
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