「ふぅ……」。
恵比寿の洋菓子店「LESS(レス)」(東京都目黒区)。この店で働く香港出身のポウ・テッキ・サンさん(33)はパウンドケーキを焼く準備を終え、一息ついた。
「日本は製菓教材が丁寧で、基礎から学べる」。そんな理由から2018年、来日した。大阪の製菓専門学校を卒業後、著名な洋菓子店に勤め、21年8月からレスで正社員として働く。
せっかく日本に来たなら、とこれまでに休日は洋菓子店を巡り、多様なデザインや味にも触れてきた。「将来はパティシエとして店を持つのが夢。でも、わたしには5年しか滞在期間がない。もっといろんな場所を経験したいのに」
5年――。19年度に導入された、外国人が日本で働く際の在留資格「特定技能」1号の最長滞在期間だ。労働力の確保を目指して創設され、ポウさんは現在、この資格で働く。
制度は働く側、雇う側双方に不都合な面がある。ポウさんにとっては就労期限がある上、母国で暮らす父を呼び寄せられない。レスにとっては、優秀な人材を手放さざるを得なくなる。共同オーナーの坂倉加奈子さんは「うちも人手不足。ポウさんのように真面目で熱意あるパティシエはありがたいのに」と複雑だ。
職場で欠かせない外国人労働者の存在。今後さらに必要になると予測する調査もあります。たくさんの外国人と共生する社会とは、どのような世の中なのか。記事の後半では、住民の20人に1人が外国人という東京都内のある区で考えます。
いまや身近な存在となった外国人労働者。背景の一つは、少子高齢化に伴う国内の労働力人口の減少にある。労働政策研究・研修機構の試算では、17年に全国に約6720万人いた労働力人口は、40年には約2割減の約5460万人になる。東京も例外ではなく、同時期比で4・7%減るとの試算もある。
そこで期待されるのが外国人…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル